スロースターター
ジル=ド=レイに聖剣フラガラックの捜索を依頼されたジャンヌ。
曖昧な部分は多いがその依頼を彼女は引き受けた。
そんな経緯で、私は大須の街で聖剣フラガラックを探すことになったのだった。
そして今日、4月3日の火曜日に私は捜索を開始した。
え? じゃあ、昨年末からここまでは一体何をしていたかって?
わかった、正直に言おう……私は、外にも殆ど出ずにダラダラと昼夜逆転気味ゲームネット三昧の日々を送っていた。理由は、冬が苦手だからだ。フランスにいる頃よりずっと寒いし、長年のひきこもり生活で寒さにめっきり弱くなってしまった。この季節は、動物と言うものは冬眠する為にあるのだろうと言う勝手な自己理論は未だ否定できないでいる。更に年末年始にかけて期待のゲームが続々と発売したので、これらをプレイしたいのもあった。特に「もそはそ」は随分とやりこんでしまいプレイ時間は120時間に到達した程だ。
ジルは、別に急がなくても良いと言っていたので、有難くお言葉に甘えさせてもらったのだった。
◆
「どうですか?」
「……ああ、おいしいな。実に美味い。」
ところ変わって、大須内のとあるハンバーグ店。
朝カラが終わった私達は、昼食をとるためにこの店に入り、私はおススメメニューのチーズハンバーグ定食を注文した。裏通りの目立たないところにあるが、入口には倒壊ウォーカーで紹介されたと言う貼り紙があって、中も意外とお洒落、当のハンバーグの味も現世の母の黒焦げバーグとは比べてはいけない程のものであった。
「よかったです、喜んでもらえて。モリモリ食べて、後でブリブリ出しちゃってください!」
「食事中にそう言った擬音を使わないでほしいんだけど……しかし、流石だな。こんなマニアックな店を知ってるなんて」
「えへへ~これでも、色々回ってますからグルメには詳しいですよ! 向かいのコ〇ダに置いてある漫画本の事だってわかるんですから! あそこには<シュ〇ト!>が全巻揃ってるんですよ?」
「これまた随分ピンポイントな情報だな……」
「あの漫画面白いですよね! 主人公チームもきゃぷツバ並みの強さですし、トシの幻の左足がチートですしね~」
「いや、読んだ事無いけど……」
「それは勿体ないですね~あれを読んでないなんて500パルターンくらい損してます」
「パルターンって、一体何の単位だ!? 全く聞いた事がない」
「とにかく、勿体ない勿体ないってことですよ~」
そういえば、まだ言っていなかったな。今回の捜索にこうして付き合ってくれている彼女の事を。ジル以外にメルアドを交換した唯一の人物である、まく朗の事を。