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巫女は問う

 洞窟を奥に進むと、そこにはかつて走っていた市内電車やトローリーバスが整然と置かれていた。他にも……

 一本道に次々と現れる大きな部屋の数々。

 そこには、やはり色々なものが並べられていた。全て、名古屋の歴史を語る様な品ばかりだ。



 メッキの禿げたしゃちほこ、

 謎の仏像、

 古臭いブラウン管のテレビ、

 某トンカツ屋の古看板、

 焼夷弾、

 ヘリコプター、

 遊覧船、

 ナナちゃんっぽいもの、



 などなど。

 まるで1つの博物館の様だ。


 暫く歩いたところで、比部くらべが何か思いついたかのように、なるほどなと言って立ち止まった。そして、私の方をいつになく真面目な顔で見る。



 「なあ、ジャンヌ……」


 「くらべー?」


 「お前、ここで引きさがるつもりは無いか?」


 「え……?」


 「戻るんなら今の内だぞ。でなければ、もう引き返す事は出来ぬやもしれん」


 「どうして、急に?」今まで進む気満々だった人間の言う言葉とは思えない。


 「この奥には、おそらくとんでもない何かがが潜んでいるだろう。単なる物の怪ではない、人智を超えた<魔物>がな。おみゃーも命が大事なら引き返す方が賢明かもしれんぞ?」


 私は首を振った。


 「警告は有難いが、戻るつもりはない。私は、真相を知りたいのだ。一度は命を落とした身、死ぬことなど恐れてはいない」


 「あはは!」比部はそれを聞いてすぐに元のいい加減そうな顔に戻った。

 「そうかそうか! それならいいんじゃ。一応、聞いておこうと思ってな」


 「もし死にたくなければ、3人はここに残っても良いんだぞ? 後は、私だけで何とかする」


 「なにたわけた事言っとるか! ここまで来たんだから、ワシらだって奥の様子を見たいがや! 行く行く、お姫様を最後までお供するぞ!」


 「……」


 まく朗も斎藤さんも頷いた。

 まったく、恐れを知らぬ奴らだ。こんな、良く言えば勇敢な人間が、この日本にいるなんて思ってはいなかった。世の中もやはりまだ捨てたものではないのだろうか?


 「この感じだと、おそらくゴールは近い。あとひと踏ん張りだから、皆気張って行こうや!」


 「おー!」


 やる気漲る仲間(?)達と共に、私は再び歩みを始める。

 単調な構造が続く通路も、比部が言うように見えない何かで終わりを感じさせるようになっていた。そして、遂にその単調な連なりが大きく変化を見せる時が来る。

 

 大きな部屋は姿を見せなくなり、一本の道がただ真っ直ぐと続く、奥にある出口のようなところに向って続いていた。私達の足は好奇心で加速し、到達点かもしれないその場所に向ってに駆ける。そして、遂にその正方形の枠を通り抜けると、即時に、今まであった閉塞感から一気に解放され、体が急に軽くなった。


 「ほぉ……」その光景を見て比部は立ち止まる。

 「おばぁも、こんなことを秘密にしとったのか」


 「……!」


 改めて周囲の状況を見回した私は、驚きのあまり言葉が出なかった。

 洞窟を抜けた先にあったものは、今まで見たものよりも更に予想外の光景だったからだ。




 




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