使命
今回は、オフ会後にジャンヌがジル=ド=レイ受けた使命についてです。
話は「オフ会のジャンヌダルク」の最終話からの続きになっています~
さて、自己紹介はここまでにして、今回、私が名古屋市大須に来た目的について話すことにしよう。
時は、昨年の暮れに開かれたブログのオフ会が終わった後、私とジル=ド=レイが二人で交わした会話まで遡る。
「……だからこそ、あなたにやって貰わなくてはならないことがある」
「やっと、本題か。皆に言わぬとは、よほどの事情なのだな?」
「まあ、言ったとしても信じないとは思いますがね」
ジルのかけているメガネがキラリと光った……気がした。
知的な男を思わせる語り口だが、生まれ変わったジルはまるで相方がボクシングでオリンピックを目指したり、アイドルを追っかけまわしたりする、どこかのお笑い芸人のような顔と体型をしている。正直、かなり似ている。
「まさか、私にかつてのように人々を導く神的存在になれとでも言うつもりではないだろうな? 残念だが、今の私にはそれほどの力は無いぞ。宗教なども作るつもりは無いからな」
「あながち間違ってもおりませんが……さて、ジャンヌ様、<神隠し>と言う言葉をご存知でしょうか?」
「ああ、あの人間が急に失踪する現象の事だろう? 小説やラノベのネタでよくある話だ。大抵は妖怪などの仕業とか言うものの、結局は何かの事件に巻き込まれている事がほとんどだ。」
「そのおりです、流石はジャンヌ様」
「……ジル、もしや、それが本当にあるとでも言いたいのか? 神隠しが本当にあると? まあ、私もこうして転生と言うものを経験した身だ。信じられない話と言うわけでもないが」
「ええ」ジルは不敵っぽく笑ったが、芸人顔なのでちょっとギャグに見える。
「ただし、隠されたのは人間ではありません」
「では、何だと言うのだ? 」
「隠されたのは、神です! 神隠しにあったのは、神そのものなのです!」
「なんだと!?」
ジルはコホンと小さく咳をした。
かけているメガネがまたキラリと光った……気がした。
「今から数百年前、ジャンヌ様がお亡くなりになられて少し経った頃でしょうか? 何者かによって神はその存在を隠されてしまった。当時、神の声聞く聖メルテロ様がいち早くその事をお知りになり、たまたま訪れていたナントに居た私や私の部下に知らせたのですが……広める前にメルテロ様は失踪。話を聞いた我々も、サノラ村に滞在中に謎の集団に襲われ、最後は全滅してしまいました。唯一生き残ったものの瀕死の重傷を負ってしまった私でしたが、研究していた錬金術の力を用い、何とか自分だけはこの現代に転生することができたのです。これは、大きな賭けでした。何せ、錬金術はまだ完成しておりませんでしたので……なので結局、この事を知るのは私だけになってしまったというわけです」
「そうか、あのメルテロ様がおっしゃったのか。私の神の声が聞こえなくなったのもそれが理由ならばある程度納得がいく。……しかし、お前は歴史とは随分違う最後を遂げたのだな。錬金術に溺れて虐殺とかとんでもないことをして最後は処刑されたとインターネット辞典で見たのだが」
「私は、錬金術を研究していたのは確かですが、そんなことはしていませんよ。おそらく、私の死後何者かが私を名乗りナントを治めたのかもしれませんね」
「そうか偽物か……それで神が隠されるとどのような問題が生じるのだ?」
「メルテロ様の話によると、全ての魂がやがて<信>を失い、最後には世界の滅亡に繋がるそうです」
「なるほど、この世は末法の世とは言うが、破滅とはまた極端な話だな。それで、私にしてほしいのは隠された神を見つけてその危機を救うという事な訳か?」
「はい」
「言っておくが、今の私は特に何の力も持たないただのニートなんだぞ?」
「大丈夫ですよ、かつて神に選ばれたジャンヌ様なら出来るはずです」
「そうか……確かに、私がこの日本に生まれ変わったのには何か意味があるだろう。わかったよ、出来る限りの事をしてみよう」
「ありがとうございます」
「それで、まずは何をすればいいんだ? 全く見当がつかないが……」
「ジャンヌ様、あなたにはまず最初に探していただきたい物があります」
「一体、何を?」
「それは、神剣<フラガラック>……!」