魔刀・振我楽の伝承
ジャンヌ達は大須観音でオフ会仲間のFOX老人と再会した。
大須に住む彼は、フラガラックによく似た名前の刀の伝説を知っているようだ。
「振我楽……一部では魔刀とも呼ばれるその刀剣を、初めて手にして、この名前を付けたのはかの第六天魔王こと織田信長公と言われている」
「織田信長……ですか」これはまた、ビッグネームが出たな。
「左様。どうやって手に入れたのかは諸説あってな……彼がまだ吉法師と呼ばれた時代に父からもらったとか、若き日に渡来人から買ったとか、斉藤道三から譲り受けたとか色々言われているが、本当のところはわからん。ただ、この刀を手にした信長が大きく出世したことは学校でも習ったじゃろう?」
「ええと……」正直、中学以降はほとんど学校に行っていないので日本史には詳しくない。
「<桶狭間の戦い>を皮切りに、多くの勝利を積み重ね、遂には美濃の雄となり天下にその名を知らしめることとなったのじゃ。一説で、この栄光の陰には、彼が肌身離さず護身刀として持ち歩いていた、振我楽の存在があったと言われておる。この刀をずっと持っていれば、信長公は天下統一ができたかもしれん」
「持っていれば……つまり、手放したんですか?」
「そうじゃ。ある部下の1人に褒美として与えた……その人物こそが羽柴秀吉」
「つまり、豊臣秀吉!?」またもビッグネームだ。
「その通り。そして、彼に刀を渡したそのすぐ後に、かの<本能寺の変>が起こり、明智光秀の裏切りよって信長はこの世を去った。そして、形見となった振我楽を手にした秀吉がその後、天下統一を成し遂げ太閣となったのじゃ」
「それも、振我楽の力ってことですか?」
「うむ、表の歴史では語られていないがな。して、この秀吉もある時遂に振我楽を手放してしまった。慢心によるものか、或いは他の理由かはわからんが、ある男に譲ったと言われている。その後、秀吉は朝鮮出兵に失敗し、失意のまま他界、豊臣家は関ヶ原の合戦で徳川家康に敗北を喫し、残った妻子も大阪夏の陣で命を落とした……ここまで聞くとこの刀の不思議な因果に気づくじゃろ?」
「いんが?」まく朗が首をかしげる。
「振我楽を持つ者には勝利と、栄光が与えられる。しかし、ひとたび他の者の手に渡れば、待つのは死と破滅の道……じゃ!」
「……」
その話、あながち否定できない。
フラガラックと振我楽が同じものならば私にも思い当たる節がある。
確かに、私もフラガラックを持っていたときは勝利を積み重ねていた。オルレアンの開放の時もあの剣は肌身離さず持っていたのだ。持っているときは万事良い方向に進んでいたのだ。
しかし、私もある時フラガラックを失ってしまった。
シャルルが戴冠式を行ったすぐ後の事だった。私が少し油断した好きに何者かによってあの剣が盗まれてしまったのだ。その後の私の悲惨な結末は歴史にも残るとおりである。
FOX老人の言うように、フラガラックにはやはり底知れぬ不思議な力があるようだ。
しかし、ジャンヌダルク、織田信長、豊臣秀吉の名が一堂に並ぶとは壮観である。
「それで、秀吉から振我楽を譲り受けた者なんじゃが……列宗と言った。どうやら織田家の関係者らしいのじゃが、彼はこのあたりに住居を構えていたらしい。そして、この大須のどこかに振我楽を隠したそうじゃ。そこから先の行方を知る者はおらん」
「そうですか……」やはり、行方不明なのか。
「ただ、列宗の子孫に限ってははそうでもなさそうじゃがな!」
「!? いるんですか?」
「うむ、実は、ワシの顔見知りでのぉ。よろしければ案内しますぞ、ジャンヌ様」
運命と言うものは面白いものだ。
オフ会で知り合った老人が、まさか、こういう形で力になってくれるとは想像もしなかった。
先ほど参拝した大須観音にも感謝しないではいられない。10円以上の効果は確実にあったと思う。ナムアミダブツ。




