とあるカラオケルームにて
場所は大須……
ここからが本編です。
「KINTAマカオに着いた! KINTAマカオに着いた! KINTAマカオに着きました~イェイ!」
カラオケルーム202号室に歌声が響き渡った。
正直に言おう、ドヘタクソとまでは言わないがヘタクソな歌声である。どのように下手なのかは説明が難しいが、とりあえず声が全部180度裏返って音程も微妙な具合に外れている感じだ。
「……えーと、どーでしたかーこの<KINTAの大作戦>は?」
「うん……とりあえずその歌、他の所では歌わない方がいいと思うぞ」
「そーですか。名曲だと思うんだけどなぁ」
迷曲の間違いだろう。こんな歌がカラオケの曲リストに入っていること自体が驚きだ。
こんな低俗な曲をどこで覚えたのか知らないが、一般人が聞いたらドン引きすること請け合いである。
「ええと、点数は、85点! 今日の自己ベストですよ! ジャンヌさまには全然かないませんけど。」
「……ははは」
あの歌で85点も取れるのは不思議とし言いようがない。まあ、確かにリズム的なものに関しては狂っていないようには思うが。しかしどちらにせよ、私の美声には本人も言ったように敵うものではないだろう。オルレアンにいたころもその歌声には評判があったし、小学校の音楽の成績も二重丸がついていたし、長年ひきこもり生活をしていた間にも、時には家族が皆外出した時にゲームをしながら、時には夜中にこそこそ布団に包まりながらアニソンを中心に歌っていたのだ。だから自分でも結構自身があったわけだが、カラオケの採点システムはそれをほとんど裏切ることがなく、歌う曲のほとんどに90点以上をつけた。現在の最高点は「メ○スのように」の96.778点ある。
「ジャンヌさまの次の曲は、大型機動戦艦ベルフォッグEXの<ツインフォーサー>ですね! タカタカの神曲キター!」
「…………誰かに諭されて~君と僕は~♪」
カラオケというものは、初めてなのだがなかなか楽しい。最初こそ緊張したが、慣れてくるとだんだん歌いたくてしょうがなくなるのだ。もう2時間くらいになるが、途切れる事無く私たちの歌は続いている。(ちなみに、8割がアニソンだ)途中で「アフレコン」という声優体験機能もやってみたが、あれもなかなか面白かった。画面に出てくるキャラクターとこちらの喋りに違和感がほとんどなく、改めて2人とも声優っぽい声なのだなと認識させられたのだった。
しかし、こんな呑気なことをしていて事をしていて良いのだろうか?
私がここ大須に来た本来の目的とは全く関係ないような気がする。今の状況を例えるなら、伝説の勇者ローランがドラゴン退治に行く途中、村で出会った猫をひたすらに追っかけまわしているようなものだろう。
まあ、焦ったところでその目的が何とかなるというわけでもなさそうだが。




