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9 想い
…俺と美冬は、教室の窓側の壁に2人並んで座っていた。
「気分はどうだ?大丈夫か?」
「うん、ごめん…ね。心配かけちゃって…」
弱々しい声ながらも美冬はこたえてくれた。
「…ねぇ、玲駄…」
「ん、どうした?」
美冬に呼ばれ、俺は彼女の方へと振り向いた。
闇夜の明かりが照らす中、まるで神秘的なベールに包まれたかのような彼女の横顔に俺は視線を奪われた。
元々、美しい彼女の顔が、涙と月の明かりで一層に輝きを増す中、完全に彼女に釘付けになっている俺もそこにいた。
(ヤバい!こんな状況だってのに、何考えてんだ俺はっ!)
「…もっと、傍に寄ってくれる?」
…!?
「…怖いの」
「あ…ぁあ…わ、分かっ…た」
俺は、歩幅一歩分くらいの距離を彼女の元へと縮めた。
「…ありがとう」
…彼女の言葉の一言、一言を聞く度に、どんどんと彼女へと吸い寄せられていく。
そして、自分達が、異様な空間にいるのにも関わらず、ついに抑え切れなくなった気持ちを彼女へと告げようとしていた。
「…なぁ、美冬」
「ん、なぁに?」
「俺、お前の事を…」