6 冷気
「次でいよいよラストかぁ」
佑斗一が歩きながら話している。
「でも、何もなくても雰囲気は十分に味わえたし、それで良しとしておかないか?」
俺も先頭をきって歩く佑斗に語りかけていた。
「まぁ、そうだな」
…
……
………
(ん?何か急に寒気が…まぁ、そこまで酷いものでもないし大丈夫か)
…
だが、体育館に近付くにつれ、どんどんと冷えてきている。
体育館の扉の前についた時には、全身に鳥肌が立ち、あまりの寒さに手足の感覚が麻痺してしまうほどだった。
「おい、佑斗。何かこの場所めちゃくちゃ寒くねーか?」
「…ぁ……あぁ…」
見ると、佑斗も、あまりの寒さに全身が「ガタガタ」と小刻みに震えている。
まるで、この場所だけ違う空間にあるみたいだ。
「佑斗、何か、この場所ヤベェよ」
尋常ではない、この寒さに俺は限界がきていた。
「大丈夫、確か、この体育館から外のグランドに繋がっているはず…」
佑斗は、そう言い放ち扉に手をかけた。
…扉に触れた瞬間、佑斗は勢いよく手を後ろに引いて離した。
「どうしたんだ?佑斗」
「…な…何、か…へ、変だ…この……と、扉…」
佑斗の尋常ではない反応に気付いた俺は、すかさず扉に携帯のライトの明かりを照らしてみた。
…
扉をライトで照らし視界に入ってきた部分は…
やけに綺麗で透明な…それでいて異様に角張のある扉の一部だった。
「…な、何だ…これ?…こ…氷…?」
扉から少し離れて佑斗の携帯と一緒に広範囲に渡って扉を照らしてみた。
…凍ってる。
扉が…な…何で?
目の前で起きている異様な光景に少しの間、俺達は唖然と立ち尽くしていた。
…先に我に帰ったのは佑斗だった。
「おい、玲駄!美冬と浩弥を知らないか?」
「……」
「おい!玲駄ッ!!」
二度、佑斗に話し掛けられて、「ハッ」と俺も我に帰る。
「…美冬と浩弥?」
俺は、周りを見回してみたが…いない。
ここには、俺と佑斗しかいなかった。
「二人は、いつからいないんだ?」
「分からない、俺もさっき気付いたばかりなんだ」
この現実とは思えない場所で、更に二人ともはぐれてしまうなんて…。
「とにかく、一旦、正面玄関まで戻ろう」
そう言い放ち走り出した佑斗に続いて俺も後を追った。