17 親友
佑斗の視線の先には…まるで地面と一体化しているかのような、先程とは比べものにならない程の分厚い氷が足を覆いつくしていた。
「玲駄、お前は最高の親友だった…せめて、お前だけでも…」
佑斗は自らの死を受け入れようとしているようだ。
俺は、力の限り氷を叩くが、びくともしない。
「その氷は、さっきまでのモノとは違う…いくら足掻いても無駄よ」
その言葉に我を忘れた俺は、バットを振り上げ、美冬へと猛進していた。
『うおぉぉぉぉっー!』
そのままの勢いでバットを振り下ろすが、彼女は一瞬にして雪の結晶となり、結果、地面を殴り付けることとなった。
「くすくす…そんなに暴れてないで、せめて、親友の最後くらいは見届けてあげなさいよ…」
後ろを振り向くと、そこには、さっきまで目の前にいた美冬が立っていた。
再び、美冬の方へと向きを変えバットを振り上げようとしたが…体が動かない。
「…少しばかり、あなたの神経を刺激して体を麻痺させてもらったわ…ここで、一緒に見物しましょう、彼の最後を」
美冬の視線の先には、無抵抗のまま立ちすくむ佑斗に、ゾンビ共が歩み寄っていく姿が写っていた。
『やめろぉーっ!』
今の俺には、力の限り叫ぶことしか出来なかった…