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なんとなくでいい、気がする

あの日のつづき

作者: 春凪とおる
掲載日:2026/04/11

「帰ったね」


少しだけ間をあけて、


「……うん、帰るよね」


誰もいない場所で、そう呟いた。




手元のカップに触れる。

白地に、青い線。


「懐かしいね」


そう言って、少しだけ笑う。


「……ちゃんと、覚えてるじゃん」




外は、静かだった。

無駄のない街。

整えられた色と匂い。


「……」


でも、


「ちょっと、つまらない」

「……いや、贅沢か」




「湊、エントリーした?」

「……なにを?」


「終わってるね」


少しだけ笑って、


「……まあ、そこがいいんだけど」




あの人は、ずっと迷っていた。


でも、

ちゃんと選ぶ人だった。




「選択肢が多い状態は非効率」


間違ってはいない。

この世界は、それでうまくいっている。


「……」


でも、

選ばなくてもいい理由が増えただけだ。




「……なんか」


あのときの自分を思い出す。


「……なんか、こっちかなって」


理由なんてなかった。




この世界は優しい。


でも、

少しだけ、


“選ばなくてもいい”




「……」


あの人は、選んだ。


迷ったまま、

でも、

最後はちゃんと。




「えらいえらい」

「……ほんとに」




ふと、

ベンチの記憶がよみがえる。


「寒いね」

「そうだな」


それだけで、

少し楽しかった。


「……ほんと、なんだったんだろ」


小さく笑う。




「……」


思い出す。


「落ち着くね」


あのとき、あの人が言った言葉。


「……」

「……そっちだったか」


少しだけ、照れたように笑う。


「……ずるいなぁ」




「……」


少しだけ目を閉じる。




好きだったよ。


「……たぶん、まだ」




声には出さない。

出す必要もない。




「……」


空を見る。

昔と、同じ色。




「……間違ってなかったよ」


少しだけ、笑って、


「……でしょ?」




カップに残ったぬくもりが、


少しだけ、


やさしかった。


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