第6話 冒険者ギルドの冒険者達
冒険者ギルドに来た俺達。
「朝からまさかのレバニラ定食やったとは……」
「……ダメだったのか?
レバーが苦手とか?」
「いや、レバもニラも平気やけど朝から食うとは思わんかった」
「……朝から食べないと力が出ないだろ。
それに依頼を受けて向かう時に消化は終わっているさ」
「そりゃ……
……そうやな」
「……それよりもまだ顔が赤いがそこまで動揺することか?」
「ふ、普通にするし、ここで言うことあらへんで!」
本当にサイレンはあの時のことは全く気にしていないようだ。
羞恥心はどこにやったのだろうか。
「……そうなのか?」
もっとも顔が赤いのはサイレンのあの姿を見ただけではなく、既に体が熱くなっていたから。
時間が経てば平気だと思っていたが、そう甘くないようだ。
「ん?
何や?」
「……何でもない」
冒険者ギルドの扉を開けて中に入ると多数の冒険者が見ていた。
「先に依頼を探すんやったな」
「ああ……
鍵を預けるのは依頼を受理した後でも大丈夫だ」
「さよか……
えっと持ってきたのは……」
水筒と双眼鏡やった。
わからん道具や重い物は部屋に置いたが、水分補給するための水筒と遠く見れる双眼鏡はあってもいいだろう。
この双眼鏡なら約三百メートルの遠い場所を見れる。
「……いい双眼鏡だな」
「せやろ?
色がええし」
「……貸してくれないか?」
「ええで」
俺はサイレンに双眼鏡を貸した。
「……見えにくいな」
「ああ、真ん中のリングを回して調整するんや」
「……こうか?」
サイレンが俺の言ったようにリングを回して調整し始めた。
「……ふむ。
確かに遠くから近くを見れるな」
「せやろ」
そう言ってサイレンは双眼鏡を返してくれた。
「……高かったんじゃないのか?」
「まあな。
でも、買ってよかったわ」
「……そうか。
だが、面白いものを見せてもらった」
そう言ってサイレンはポーチから瓶を渡してくれた。
「……飲んでおけ」
「何や、これは?」
「……栄養ドリンクのようなものだ」
「栄養ドリンク?
ええんか?」
「……ああ」
瓶を開けて飲み始める。
流石に仲間であるサイレンが毒を飲ませることも、いきなり試練と言って試す人でもないことはわかる。
「……スッとする」
飲み心地は悪くなく、味も本当に栄養ドリンクでほんのり甘くて美味しい。
「……そうか」
「ありがとうな」
「……飲み終えた瓶はあそこに置いておけ」
「あそこ?」
すると、サイレンが指した場所に瓶を回収する箱がある。
「ああ、リサイクルするんか?」
「……そういうことだ」
ギルドを見ればゴミ箱もあるし、役所のような場所だが、一応、酒を飲む場所もある。
だが、ここは本格的な飲食店のつもりはなく、あくまで安いお酒とつまみ、軽食があるだろうなという程度である。
「……それでは依頼をーー」
「よっ、お前らだろ?」
サイレンが話すと同時に中年の男性冒険者が話しかけてきた。
何やら、ニヤニヤと笑っているように見える。
「……ん?」
「同じ部屋で寝泊まりしている冒険者パーティー」
「ヒューヒュー!」
それを聞いて俺はだろうなと思った。
絶対に揶揄ってくる冒険者がいると思った。
「……そうだが……
……おかしいか?
……冒険者パーティーなら普通だろ?」
サイレンはどこがおかしいのかわからないと言うような感じでキョトンとした表情で聞き返してきた。
「それを言い切るとはホンマ、凄いわ……」
「え?
サイレンさん……
練人くんと一緒に寝たのですか!?
本当に!?」
「ああ……」
「だ、大丈夫ですか!?
アタシが同じことをしたらお父さんが大慌てしますよ!?」
ダイヤナさんの驚きを見て、ああ、俺は間違ってないんだと思えるようになった。
「そ、その言い方やと俺と一緒に泊まったら遠慮なくーー
ってそう言う風に聞こえるんやけど……
俺は紳士やからそう言うことはせんわ」
「……そうだな。
練人なら大丈夫だ……
ベッドで寝たらすぐに寝た。
だから、私も安心してぐっすり寝れた」
「それ言わんといて!!!!」
「……速攻で……
寝た……?」
「サイレンさん!?」
サイレンは普通にそれをカミングアウトした。
「え……
お前、こんな美人と同室なのに、速攻で寝たの?」
「……マジで?
普通、ドキドキして童貞のように眠れずにいるんじゃないのか?」
「ちゃ、ちゃうんねん!
あれは、それは、そのーー!」
「ああ……
最初、練人も眠れるのかとかぶつぶつ言っていたが……
ベッドで寝て布団で包んだら数分で寝たな。
練人が紳士で助かった」
「せやからそれ言わんといて!」
「く、くはははっ!
マジかよ!
こんな美人といたのに数分で寝たとか!」
「確かに紳士だなあ!
男としてどうなんだと思うけどな!」
「それ言うなや!
自分でも普通にどうなんやと思うからな!」
「おもしれー!
お前、また酒の肴提供してくれたな!」
「また!?
またっつったんか!?」
「そうだぜ!
お前は色々目立つからな!
美人と一緒のパーティーはもちろんだがその喋り方!
結構珍しいからな!」
「でも、それらよりも断然おもしれー!」
「そんなに笑うなや!」
「……確かに喋り方は他とは違うが構わないさ。
別に罪ではない上、その喋り方が練人がそこで育ったと言う証明でもあるからな」
「せ、せやな」
「ほう……
もし、そいつが変な喋り方でも気にしないのか?」
「ああ……
その程度で気にしてパーティーの連携が取れないようでは冒険者は失格だ。
私は気にする気はないし、それが理由で差別する者を仲間にするつもりはない。
……お前もそのつもりはないだろ?」
サイレンのその言い方はまるで信じ切っているかのように淡々と言った。
「それよりも本当なの?
練人くんと同室って……」
「……おかしいか?」
「え?」
「……冒険者となれば様々な理由で同室になることもある……
空いている部屋が一部屋しかないとかな……
それに男女別の冒険者が一緒の部屋に泊まるのは私に限った話ではない」
「そうなの!?」
「いやいや違うでしょ!?」
そうダイヤナさんが驚きを隠さないよう表情をした。
他の女性冒険者も同じ態度……
かと思えば、
「ああ、確かにあったわよね」
「新人だった頃は節約のために泊まったわ~」
「最初はお互い緊張したけど、今は余裕でできるし」
そう言う年上女性冒険者の会話もあった。
サイレンも新人冒険者の筈だが、そっち寄りなのだろうか。
「……さて、そろそろいいか?
最初の依頼を選ばないといけないからな」
「ああ、悪かったな」
「見た感じ、お前は静かな場所の方が好きそうだもんな」
「……確かに静かな場所は好みだが、騒がしいのも悪くない」
「ははっ!
お前も珍しいタイプな気がしてきたぜ」
「……そうか」
そして、サイレンはクールに笑った。
どこか嬉しそうに見える。
「……行くぞ」
「あ、ああ……」
そして、サイレンの後を追った。
「あの、サイレンさん……」
「……ああ、最初の依頼を受けることを優先だ。
例のことはいずれな……」
「は、はい」
(例のこと?)
ルビィズさんも気になったのか、ダイヤナさんにコソコソと話してきた。
それをチラッと見るが、ルビィズさんの表情とダイヤナさんの何でもなさそうな顔から大したことではなさそうだ。
まあ、最初の依頼を選びたい気持ちはあるし、俺もギルドの掲示板を見る。
掲示板には様々な依頼が並んでいた。
「……さて、どないするか……
おすすめの依頼はあるか?」
「……そうだな……
……練人は戦闘経験はないのだったな」
「ああ、せやで」
「……そして、お前は少しでも経験を積みたいのだろ?」
「……せやな」
「……ならば……」
そして、サイレンは依頼を目で選び始める。
「……これくらいしかないか」
サイレンが手に取って見せた依頼にはこう書かれていた。
〈【笑い花】の処理
頼む!
あの花を処理してくれ!
もう我慢の限界なんだ!
報酬金:四百デラル
笑い花一体に付き二百デラル〉
「【笑い花】?
笑う花か?」
「……そうだな」
「……にしても随分と必死な依頼人やな」
「……行けばわかる」
「行けば?」
「ああ……
そこに行けばすぐにわかる」
サイレンの言い方にはどこか含みがある言い方だ。
「……せや、サイレン」
「……ん?」
「魔獣図鑑ってあるんか?」
「……読みたいのか?」
「あ、ああ……
彼を知り己を知れば百戦危うからずって言うしな」
「……そうか。
……それならこの依頼が終えたら渡そう」
「ええんか?
助かるわ!」
何とか、それに関しては何とかなりそうだ。
依頼を改めて見ると討伐の他にもモノ探しの依頼もあった。
「……?
……練人?」
「ああ、それじゃ依頼を受けに行こうや」
「……そうだな。
この依頼を受ける」
サイレンが頷いてから受付に依頼書を渡す。
「……練人もカードを渡せ」
「ああ、これでええか?」
「はい。
こちらの紙にサインをお願いします」
受付嬢が指した場所にサイレンがサラサラと書いた後に判を押した。
「はい。
受理しました。
こちらお受け取りください」
「……わかった」
すると、サイレンは数枚の紙を受け取った。
頑張ってくださいね」
「依頼の場所って遠いんか?」
「……ギルドの裏の馬車停に言って乗り手に説明すれば行ける」
「さよか」
「……それでは行こうか」
(……あれ?
そういえば、楽になったような)
さっきまでの体の熱は治り、怠い感じが多少マシになった。
時間が経ったから楽になったのだろうか。
そして、さっきサイレンが飲ませてくれた栄養ドリンクに気付いた。
「……おおきにな」
「……練人のことは多少はわかった……
……そういうタイプの人間だとな。
今回は許すが、今後は休ませるからな」
「了解や」
「……体調悪いのを私に隠そうとするのは十年早い」
「……みたいやな」
ただ、それ以上にサイレンが優しい人なのはよくわかった。
「にしても、よく薬持っとったな」
「……私の母は薬屋を経営していてな……
だから、薬の知識も人間の様子も教えてもらった……
故郷の先輩にも練人のような無理をするタイプの人間はいると教えられて注意されたのもあるな」
「……ほんまサイレンは凄いわ」
「……そうか」
ギルドを開けて俺達は馬車停に向かった。




