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醜男だった俺が、男女比1:500の世界で王と呼ばれるまで  作者: きなこもち
第1章

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白鳥透子


VIP区域での説明が終わる頃には、学内SNSはすでに沸騰していた。


スマホを開くと、通知が止まらない。


【SSS+様、生徒会長と接触】

【麗華様が動いた】

【もう契約?】


まだ何もしていない。


だが「何かが起きた」という事実だけで、空気が揺れる。


俺は画面を閉じる。


焦る必要はない。


選ぶ側は、急がない。


神代が言う。


「本日は学内案内のみです。接触は最小限にしてください」


頷く。


だが廊下を歩けば、最小限など意味を持たない。


階段を下りる途中、踊り場で立ち止まる女子学生がいる。


華奢な体つき。


黒髪のロングヘア。


白い肌。


細い首。


大きな瞳。


前の世界なら、透明感系女優として雑誌の表紙を飾っていた顔だ。


だがこの世界では。


痩せすぎ。

儚すぎ。

存在感が弱い。


低評価。


彼女は本を胸に抱えたまま、こちらを見ている。


目が合った瞬間、肩が震えた。


逃げるかと思った。


だが逃げない。


足が、床に縫い付けられたように動かない。


神代が一歩前に出ようとする。


俺は小さく手で制する。


「大丈夫だ」


彼女の前で、足を止める。


距離は一メートルほど。


近すぎず、遠すぎない。


彼女の喉が、小さく動く。


「あ、あの」


声は細い。


「天宮、様ですよね」


様。


その呼び方に、わずかに違和感を覚える。


「そうだけど」


彼女は視線を下げる。


「わ、私文学部の、白鳥透子です」


透子。


名前を心の中で反復する。


彼女の指先は、本の端を強く握っている。


緊張と、期待。


そして、怯え。


「何か用か?」


少しだけ首を傾ける。


意識的な仕草。


彼女の呼吸が乱れる。


「そのお顔が」


言い淀む。


整いすぎている、と言いかけてやめたのだろう。


この世界でその言葉は、褒め言葉にならない。


俺はゆっくりと言う。


「どう思った?」


問い返す。


彼女は一瞬だけ目を上げる。


その瞳に、強い揺れ。


「き、綺麗だと、思いました」


周囲の空気がわずかにざわつく。


近くにいた学生たちが、こちらを見る。


整いすぎた顔を“綺麗”と評価するのは、この世界では少数派だ。


彼女はそれを分かっている。


それでも言った。


勇気だ。


胸の奥が、静かに動く。


前の世界で、俺にそんな勇気を向けてくれた人間はいなかった。


俺は、ほんの少しだけ微笑む。


「君のほうが、綺麗だよ」


その瞬間。


透子の時間が止まった。


瞳が大きく開く。


「え?」


耳まで赤くなる。


周囲の空気が、さらに揺れる。


嫉妬。


羨望。


焦燥。


俺は言葉を続ける。


「今まで言われたことはなかったか?」


透子の指先が震える。


「はい」


小さな声。


「でも、俺は好きだ」


静かに。


はっきりと。


断定はしない。


だが否定もしない。


好きだ。


その一言で十分だ。


透子の目に、涙が滲む。


泣きそうになるのを、必死でこらえている。


「ありがとうございます」


声が震えている。


胸の奥で、甘い感覚が広がる。


これだ。


価値を与える感覚。


誰かの世界を、言葉一つで塗り替える感覚。


神代がわずかに咳払いをする。


「移動します」


俺は透子から視線を外す。


「またな」


曖昧な言葉。


確約はしない。


期待だけ残す。


透子はその場に立ち尽くしたまま、こちらを見つめている。


背中に、強い視線を感じる。


廊下を歩きながら、スマホが震える。


【白鳥透子、SSS+様と会話】

【透子泣いてた?】

【もう契約候補?】


波紋が広がる。


まだ何も始まっていない。


だが、確実に動いている。


俺はガラス窓に映る自分を見る。


整った顔。


揺るがない視線。


ゆっくりと、口角を上げる。


これは偶然じゃない。


仕組める。


与えるふりをして、縛る。


救うふりをして、依存させる。


廊下の向こうで、再び麗華の姿が見えた。


こちらを見ている。


透子とのやり取りを、遠くから見ていたのだろう。


その瞳に、明確な火が灯っている。


競争が、始まった。


そして俺は。


その中心にいる。


ゆっくりと、息を吐く。


楽しい。


選ばれない側だった人生が、

選ぶ側に反転した。


ならば。


徹底的にやる。


ここで、頂点に立つ。


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