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醜男だった俺が、男女比1:500の世界で王と呼ばれるまで  作者: きなこもち
第2章

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17/20

派閥戦争


ローテーション制が発表されてから、学園の空気は目に見えて変わった。


表面上は静かだ。


廊下ではいつも通りの挨拶が交わされ、講義は滞りなく進み、カフェスペースでは控えめな笑い声が響いている。


だが、その裏側。


視線の質が変わった。


俺が通るとき、ただ羨望するだけだった目が、今は計算している。


誰と並んでいるか。

今日の順番は誰か。

次は誰に回るのか。


序列が、固定されたからだ。


固定された序列は、安心を生むと同時に、不満も生む。


---


夜。


ひよりの配信が始まる。


彼女の部屋はいつもより照明が明るい。


背景には、さりげなく置かれた高級ブランドの箱。


コメント欄が高速で流れていく。


《今日は誰の日?》

《王様は?》

《透子どうしてるの?》


ひよりは微笑む。


「今日はね、王様とディナーだった」


わざとらしくない自然な言い方。


だがその言葉は、確実に波を起こす。


コメント欄が荒れる。


《匂わせ?》

《公式は麗華じゃないの?》

《透子かわいそう》


ひよりは肩をすくめる。


「順番だからね」


その“順番”という言葉が、火に油を注ぐ。


俺は寮室でそれを見ている。


画面の向こうで、自分の名前が飛び交う。


自分が中心にいる構図が、明確に可視化される。


胸の奥が、じわりと熱を持つ。


---


翌朝。


学内掲示板が荒れていた。


【ひより、特別扱い?】

【ローテーション守られてる?】

【王様の本命は誰】


カフェスペースでは、透子が一人で座っている。


本を開いているが、ページは進んでいない。


目元が、少し赤い。


俺が近づくと、彼女は顔を上げる。


無理に微笑む。


「昨日、楽しかったですか?」


声は穏やかだが、奥に棘がある。


「普通」


曖昧に答える。


透子の指先が、カップの縁をなぞる。


「ひよりさん、嬉しそうでしたね」


嫉妬。


だが、責める言い方ではない。


不安だ。


俺は椅子に座る。


「順番だろ」


それだけ言う。


透子の目が揺れる。


順番。


制度。


公平。


それは理屈として正しい。


だが感情は別だ。


彼女は俺を見ている。


俺の言葉一つで、安心も不安も決まる。


その事実が、はっきりと分かる。


胸の奥に、またあの感覚が広がる。


支配。


優越。


「透子は透子だろ」


軽く言う。


断言しない。


特別とも言わない。


だが、突き放しもしない。


その曖昧さが、彼女を縛る。


透子は小さく頷く。


「はい」


完全には納得していない。


だが、離れない。


---


その日の午後。


生徒会室。


麗華は資料を机に叩きつける。


珍しい仕草だ。


「ひよりの配信が過熱しています」


冷静な声だが、わずかに低い。


「学内外のアクセス数が急増。スポンサーが動き始めました」


「いいことだろ」


「管理が必要です」


麗華は俺をまっすぐ見る。


「派閥が明確になりすぎると、対立が激化する」


その言葉の裏には、焦りがある。


生徒会長としての立場。


公式契約者としての立場。


どちらも守らなければならない。


だが、ひよりは感情ではなく“公開性”で戦っている。


配信は武器だ。


炎上は拡散だ。


「抑えるか?」


俺は問う。


麗華は数秒、沈黙する。


「必要なら」


政治的圧力。


スポンサー調整。


情報操作。


彼女ならできる。


俺は椅子にもたれる。


「面白くなくなる」


正直な感想だ。


麗華の瞳が揺れる。


「争いは消耗です」


「消耗してるのは誰だ」


問い返す。


麗華は答えない。


答えられない。


消耗しているのは、彼女たちだ。


俺は消耗していない。


むしろ、加速している。


---


夜。


スマホが鳴る。


透子からのメッセージ。


《少しだけ、声が聞きたいです》


ひよりからの通知。


《今日の投稿、どう思う?》


麗華からの連絡。


《明日、対策会議》


三方向から、同時に。


俺はベッドに寝転がる。


天井を見つめる。


十人の女が、それぞれに動く。


俺を中心に。


この構図は、完璧だ。


だが。


胸の奥に、薄い空洞が広がる。


十人と関わっているのに。


なぜか、誰とも深く繋がっていない感覚。


俺はその感覚を、無視する。


今はまだ、陶酔の最中だ。


支配は機能している。


構造は崩れていない。


それでいい。


そう自分に言い聞かせながら、スマホを置く。


外では、まだひよりの配信通知が鳴っている。


派閥は、静かに形を成していた。


そして俺は、その中心で、笑っている。


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