表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
醜男だった俺が、男女比1:500の世界で王と呼ばれるまで  作者: きなこもち
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/19

最初の契約


透子の涙は、波紋になった。


それは静かに、だが確実に広がっていった。


学内SNSでは、俺と透子のやり取りが切り取られ、拡大され、解釈され、勝手に物語にされている。


【白鳥透子が、最有力候補?】

【整い顔でも選ばれる時代】

【生徒会長どう出る?】


“どう出る?”


その問いの答えは、意外なほど早く訪れた。


---


放課後。


生徒会室。


重厚な木製の扉を開けた瞬間、空気の質が変わる。


静かだ。


だが張り詰めている。


長い机。

壁一面の書棚。

整然と積まれた資料。


この部屋は、秩序そのものだった。


そしてその中心に、鷹宮麗華がいる。


椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばし、指先を組んでいる。


目だけが、こちらを真っ直ぐに捉えている。


「来ましたか」


声は落ち着いている。


だがその奥に、硬さがある。


俺は扉を閉める。


「呼んだのはそっちだろ」


麗華は立ち上がる。


ゆっくりと机の端まで歩き、手を置く。


その仕草は優雅だが、わずかに力が入っている。


「透子の件、把握しています」


「問題あるか?」


「問題というより影響です」


彼女は窓の外を見る。


中庭では、数人の女子学生がこちらを見上げている。


ガラス越しに、視線が刺さる。


「あなたの言葉は、重い」


麗華は言う。


「あなたが“綺麗だ”と言えば、その人の評価は上がる。逆も然り」


正しい。


俺は否定しない。


「それが?」


麗華の目が細くなる。


「無秩序に価値を与えれば、争いが起きます」


彼女の立場は“秩序を守る側”。


男が希少なこの世界で、選択は政治だ。


「だから」


麗華は一歩、距離を詰める。


「最初は私が引き受けます」


空気が止まる。


それは告白の形をしているが、内容は支配だ。


「あなたは私のものになる」


断定。


疑問形ではない。


お願いでもない。


宣言。


その瞳には、強い決意がある。


だがその奥に、わずかな焦りが混じっている。


彼女は“選ばれない顔”で頂点に立ってきた。


努力と実績で、自分の価値を積み上げてきた。


だが今は違う。


選ばれる側に立っている。


その不安が、かすかに滲む。


俺は沈黙する。


わざと。


数秒が、長く感じる。


麗華の呼吸がわずかに乱れる。


「どうしました」


「条件がある」


静かに言う。


麗華の眉が、ほんのわずかに動く。


「聞きましょう」


「俺は縛られない」


はっきりと。


逃げ道を残さない言い方で。


「契約はする。でも、誰と話すか、誰に言葉を与えるかは俺が決める」


麗華の目が鋭くなる。


支配するつもりで来た彼女に、主導権を突き返した。


沈黙。


生徒会室の時計の針の音が、やけに大きい。


麗華の中で、計算が走っている。


プライド。

立場。

学園全体のバランス。


そして、俺という存在。


やがて、彼女の口元がわずかに上がる。


「いいでしょう」


承諾。


その瞬間、構造が確定する。


俺が選ぶ側であること。


麗華が“最初の公式”になること。


だが、独占ではない。


麗華は一歩、さらに近づく。


距離は半歩。


視線が絡む。


「ただし」


声が低くなる。


「私が隣に立つ以上、簡単に落ちると思わないで」


挑発ではない。


宣戦布告だ。


俺は小さく笑う。


「落ちるのはそっちかもしれない」


一瞬。


麗華の瞳が揺れる。


それをすぐに隠す。


だが、確かに揺れた。


---


数日後。


公式発表の日。


講堂にはカメラが並び、フラッシュが光る。


学内配信も同時に行われている。


壇上に立つ。


隣に、麗華。


整いすぎた顔同士が並ぶ。


この世界の主流基準から外れた二人が、中心に立つ。


それがどれほど象徴的か、全員が理解している。


司会が告げる。


「本日、SSS+判定男性・天宮朔也様は、生徒会長・鷹宮麗華様と正式契約を締結しました」


拍手。


だがその音の中に、ざわめきが混ざる。


透子は、最前列で俯いている。


ひよりは、カメラ越しに微笑んでいる。


嫉妬。

焦燥。

対抗心。


全部が渦巻く。


麗華が俺を見る。


「これで秩序は保たれます」


小さく囁く。


俺は前を向いたまま答える。


「どうだろうな」


胸の奥が、熱い。


守られる存在から、選ぶ存在へ。


選ぶ存在から、制度を動かす存在へ。


フラッシュが瞬く。


その光の中で、確信が形になる。


俺は、もう笑われない。


笑う側だ。


価値を与える側だ。


そして今、正式に“中心”に立った。


優越は、陶酔へと変わる。


それが、はっきりと分かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ