表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/24

第22話「海獣の片鱗」

「アルノルド! ミオちゃんを離しなさい!」


「ふぅ……すっかり海賊の顔になりましたね、エルダ」


「あたしにはこれくらい解放的な方が性に合ってるのよ!」


「残念です。いずれは隊を率いるほどの方と思っていた」


「……妄想はそこまで。ミオちゃんを返しなさい!」


エルダが足を大きく振り上げ、海軍兵に攻撃する。


まるで踊っているかのような動きで海軍兵を蹴り、圧倒する。


その隙にもアルノルドはミオを連れて距離をとっていた。


(どうしよう、エルダが……)


また手を噛んでやろうかと、ミオは息を吸い込んで口を開く。


「おっと。同じ手には引っかかりませんよ」


ミオの抵抗はむなしく終わる。


だんだんとエルダと距離が出来ていき、ミオはなけなしの抵抗をするしかなかった。


離れていくミオにエルダは顔面蒼白になって手を伸ばす。



「ミオちゃんっ!」


「よそ見をするなっ!」


「うあっ!?」


海軍兵が隙をみせたエルダに剣で斬りかかる。


刃が腕に触れて血が飛びだし、痛みにうめく。


いくら怪力で強くても、傷を負えば痛みを背負うことになる。


「エルダッ!!」


あっという間にエルダと離れてしまい、ミオは無力さに歯を食いしばる。


誰かに依存しなくては生きられない自分がキライだ。


弱虫だから孤独がさみしい。


もう少し器用に虚勢を張れたっていいじゃないか。


これではただの守ってちゃん。


まさにお姫様扱いを求めるお姫様だ。




林を抜け、島の反対側に出る。


岩場の多い場所に海軍の船が身をひそめていた。


アルノルドが姿を現すと、各々に動いていた海兵たちが一斉に敬礼をした。


「一部の隊を残し、船を出す! 残る兵は海賊を捕らえよ!」


「「はっ!」」


『離して! 離してよ!』


余裕をなくしたミオは元いた世界の言葉で叫んでいた。


どの言語を口にしているかもわからなくなるくらい、頭の中はパニックだ。


アルノルドに引かれ、海軍の船に連れ込まれてしまう。


エルダを傷つけた。


どうしてこんなに迷惑をかけるしか出来ない?



腹が立つ。


キライだ。


傷つけてくる海軍兵も、アルノルドも、ミオも大嫌いだ!!


「――ミオッ!」


鉱山から降り、林を抜けてカイが飛び出てきた。


アルノルドに捕まったミオを見て、白目も見えるほどに激怒する。


「アルノルド! ミオをかえせ!!」


「船を出せ!!」


カイの叫びに耳を貸すことなく、アルノルドは海兵たちに命じて船を出航させた。


陸から離れていく船にカイは血走った目で、牙をむき出しに怒声をあげていた。


「はなせ。ミオをかえせーっ!!」


――そのとき、たぶんミオは見てはいけないものを見てしまった。


カイの瞳孔がまるで獣のようになり、手は鋭く長い爪を備えている。


腕に鱗模様が刻まれており、これまでカイが全力で隠そうとしたもう一つの顔だ。


(カイ? まさかこれって……)


キアーラたちの言葉が脳裏をよぎる。


吸盤のついた腕が何本も伸び、海へ足をつけたカイが腕を横に振ると、衝撃波が海を切り裂いた。


ギリギリ攻撃を免れた軍船は、一刻も早く距離をとろうとスピードをあげる。


「これが海獣の一部か」


アルノルドは歪んだ笑みをして舌なめずりする。


遠くなるカイの姿に、ミオはようやくアルノルドの手を振り払い、船から身を乗り出して叫んだ。


「カイーッ!!」


その声はカイの動きを止める。


顔を上げたカイはひどく憔悴しており、海に足を沈めて泣きそうになっていた。


「撃てーっ!!」


言葉と同時に船から大砲が放たれる。


それは砂浜に直撃し、白い煙を巻きあげてあたりを覆い隠してしまった。


いても立ってもいられないと、ミオは我を顧みず船から飛び降りようとするが、アルノルドに捕まってしまい、焦りばかりが濃くなった。


(どうしよう! どうしよう!?)


大砲の弾が飛んで、砂浜にいたカイの姿が見えなくなる。


何も出来ないまま連れ去られ、ショックを受けたミオはさめざめと泣きだした。


(私、なにを見てしまったの?)


あれは決して人の持つものではなかった。


怒りに身をゆだねた姿は獣のよう。


その姿を見たことでカイを傷つけた。


見られたくなかったと言わんばかりの切ない表情と、ミオを助けようと怒り狂う二つの顔があった。


(ごめんなさい、カイ。ごめんなさい!)


島から船は遠ざかる。


再び海が切り裂かれることはなかった。



それから数日。


船は港に着き、アルノルドはミオを連れて馬車を走らせた。


口を聞こうとしないミオを連れ、たどり着いたのはスペランツァ王国の首都・ルーチェだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ