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第11話「コンプレックスが目立たない?」

港まで駆け、岩場の陰に隠した船まで戻る。


太い縄で出来たはしごを下ろされ、それを掴むとカイはミオを抱き寄せて足をかけた。


『キャーッ!?』


ミオを抱えたままカイは器用に昇っていく。


「ちょっとぉ、あたしはぁ?」


「そっちにもおろしただろ」


カイは隣に垂らされた太い縄を指す。


素っ気ないカイにエルダは頬を膨らませ、手足をバタつかせる。


しぶしぶと縄のはしごを掴み、上にいる船員たちに引っ張ってもらっていた。


甲板に降りると船員たちに囲まれ、集中する視線にミオは身を強張らせる。


カイとミオの帰還を確認すると、続けて戻ってきたエルダに歓迎の声があがった。



「おぉー、エルダ! 久しぶりだなぁ!」


船に残っていたのは副船長のドク。


「カイと会ったのか! 予定より早いんじゃないか?」


続けて整備士のレンツがエルダに声をかけた。


「やほ~! ドク、レンツ! ドクってば、また筋肉増えた?」


「おう! 今は二の腕を徹底して鍛えてるぞ!」


「また腕相撲で勝負ね!」


和気あいあいとした様子で、エルダはすぐに打ち解けていた。


すんなり馴染む姿は男が多い場では花形だ。


海軍兵には恐れられていたが、細腕で樽を投げるギャップからだろう。


(普段からあんな大きなもの抱えているから平気なのかな?)


ミオはこっそりと自分の胸に手をあて、膨らみの小ささにうなだれる。


胸の大きさが並以下のミオからすると、エルダは少しでいいから分けてほしい代物を下げていた。



「エルダ!」


ビードロのように澄んだ響きがエルダを呼ぶ。


振り返った先に晴れやかな表情を浮かべ、エルダのもとへ駆けるジュリアがいた。


ジュリアがエルダに抱きつくと、ジュリアの顔が膨らみに埋まる。


衝撃的光景に目を見張っていると、さらにエルダはジュリアのふわふわの髪を撫でて幸福感を前面に出していた。


「ジュリア、また小さくなった?」


「はぁあ!? エルダが縦に長すぎるのよ!」


「本当にジュリアちゃんはかわいいのぉ! おねーさん嬉しい!」


「ギャーッ! ギブギブ!!」


エルダの抱きしめる力はやはり強いようだ。


ジュリアが「うげっ!」と舌を出し、ジタバタして逃れようとする。


エルダが能天気に謝ると、ジュリアは解放され、乱れた髪を整えながら鼻息を荒くした。


「エルダがいないとこの船、女性があたしだけなんだからいてくれないと困るの!」


「あはは~。でもほら、そこに新しい子いるじゃん?」


エルダはミオを指す。


やりとりがわからず、ミオは言葉を発することも出来ずに二人の顔色をうかがうしか出来ない。


ミオに気づいたジュリアがパッと花開くように笑みを浮かべた。


「ミ~オ~! さっきぶりぃ!」


「ジュリア!」


飛んだり跳ねたり、ころころ表情が変わってジュリアは愛らしい。


小動物を見た時のように愛情があふれ出し、ミオはジュリアの背に手を回した。


「ではではあらためて。はじめましてミオちゃん。あたしはエルダ」


ジュリアとの抱擁のあと、エルダが前に出て、ミオに手を差しだした。


眩しい光に当てられてミオは手を握り返す。


するとエルダがその手を引き寄せ、両手でふにふにと揉みはじめた。


「どこから来たの~? 髪、すごくキレイだねぇ」


「あ、あ、え、エルダさ……」


「エルダ。ミオはまだ言葉を覚えている最中なの」


エルダの問いにジュリアが代わって返事をする。


「覚えているって……。あ、他の大陸出身なのかな?」


「……うん」


あいまいな点も多く、ジュリアはパッと目を反らしてしまう。


ふと、船の下から声がして覗き見ると、大量の荷物を抱えたラウロとリーノが手を振り、“キヤルマ”から戻ってきた。



「おーい、荷物が多いんだ! リフトおろしてくれー!」


「もう……ムリ。重い……」


「なにあれ。買いすぎでしょ」


キヤルマは珍しい調味料を多く売っているため、料理人として好奇心旺盛なラウロには無茶をしてでも買い漁りたくなる。


一方、整備士として部屋にこもりがちなリーノはラウロの荷物持ちにされ、体力を使いきって真っ青になっていた。


二人を甲板から眺めていたカイがレンツをはじめ、他の船員たちにリフトをおろすよう指示を出す。


ミオが手伝おうと前に出ると、レンツがあわててミオを止めにかかった。


「愚息がすまん……」


「ぐそく……?」


どういう意味かと尋ねようとして、カイが間に割り入る。



「ラウロの金遣いはいつものことさ」


ミオが意味を知ろうとするのを妨げるようだった。


疑念を抱いたミオはカイに聞くのをあきらめ、ジュリアに教わることにした。


「ジュリア。レンツ、なに?」


「あぁ、まだほとんど喋ってないからわかんないよね。ラウロとリーノの父親よ」


血は繋がっていないけど、と呟きも添えられた。


すぐに言葉を理解できなかったが、ジュリアが身振り手振りで伝えようとしてくれたおかげで、ミオの中に関係性が落とし込まれた。


(ずいぶんと似てないんだな)


顎に短いひげをはやし、無骨な印象のあるレンツ。


ラウロとリーノは中性的な顔立ちで、身体は細い。


二人のテノール声は心地よく、ラウロがしゃべると賑やかさが増す。


リーノは抑揚が少なく、ミオには聞き取りやすかった。


(二人の髪、キレイだな)


カイの青色もそうだが、この世界は髪色がカラフルだ。


黒髪か茶髪の多かった元の世界と異なるが、カラフルなのはどうやら地毛が多いらしい。


おかげでミオのマリーゴールドの髪は目立たず、コンプレックスを刺激してくる人はいなかった。


(私、もしかして変じゃない?)


エルダに目を向けると、右目の下にあるホクロの色っぽさが映る。


快活で、女性としての艶っぽさもあり、フランクな性格。


視線に気づけば微笑みかけてくれる品の良さ。


ふと、エルダがミオの髪をキレイだと言ってくれたことが脳裏によぎり、気恥ずかしさに毛先を指に巻きつけた。

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