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ふじのたにこそ ~陰キャのおれがクラス一人気の陽キャ女子にパンツの色を聞かれた話~  作者: じゅくうちょ
第1章 最高の返答を求めて

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第5話 パン・ツー・マル・ミエ!



      ******



「おい、谷藤! 寝てんじゃねーよ」

 おれはいまや聞き慣れた今野の声で目を覚ました。頭の中はぼんやりとはしているが、すぐさま状況を把握する。新幹線の車内、窓には富士山、目の前には今野、やっぱりおれは寝るたびにタイムリープしているようだ。


「塾長、だから結婚できないんすよ」

 おれはわざと前回と同じことを言う。


「テメェ谷藤何言ってんだよ! 私塾長じゃねーし、寝ぼけてんじゃねぇーよ」

 きた! やっぱり同じだ。


「はいはい、お前みたいなめっちゃ可愛い子が結婚できないわけないしな」


「テッ、テメェ、な、何言ってんだよ。気持ちわりーな」

 今野が驚いたような表情でこっちを見る。心なしか顔が赤くなっている気がした。ん、あれ? おれ何言ってんだ! 前回のやり取りを思い出してつい口に出してしまった。女の子に面と向かって「めっちゃ可愛い」なんて言ったのは人生初かもしれない。こっちも顔が赤くなる。


 少しの気まずい沈黙の後、気を取り直した今野がしゃべりだす。


「マジ超ブルーなんだけど」

 こっちが憂鬱なんだよ! ほんと無礼なやつだ。でもこの流れは……。


「谷藤、今日のパンツ何色よ?」

 きたー! やっぱりこれだ! ありがとう今野。おれは大爆笑間違いなしの返しを知っている。見てろよ!


 ワンテンポためてから塾長直伝の振り付きで俺は答えた。


「パン・ツー・丸・見え、パン・ツー・丸・見え、パン・ツー・丸・見え、おっぺケペケペケペー!」

 おれは、こんな陰キャはいないだろ、と思われるくらい全力でやり切った。


「……」


 あれっ? なんか車内の空気がおかしいぞ?


 さっきまで生徒たちの話し声でざわざわしていたのに今は電車の音がはっきり聞こえる。みんな笑いをこらえているのかな?? これはやり続けるしかない。おれは気を取り直してもう一度全力で返答した。


「パン・ツー・丸・見え、パン・ツー・丸・見え、パン・ツー・丸・見え、おっぺケペケペケペー!」


「……」


 やり続けても車内の異様な雰囲気は変わらない。な、なんか言えよ今野!


「……、あっ、富士山綺麗だな」

 それだけ言うと今野は帰って行った。


 陽キャ女子グループも騒ぎもしない。引き攣ったような顔でこっちを見ていた。 


 車内がほんの少しざわつく。


「な、なんだよあれ?」

「あいつおかしくなったのか?」

「いや谷藤は元々おかしかったぞ」

「ご乱心ですぞ」


 あれっ? ここって冬山だったっけ? 俺は襲ってくる猛烈な寒さに凍え死にそうになった。助けを求めるように隣に座っているバディの中村を見た。


「ま、まあ谷藤は昔から真冬でも半袖短パンだったからな。寒さには強いだろ。気にするなよ」

 バディにトドメを刺されたおれは凍りついたままシートに倒れ込んだ


 塾長、もうダメっす。死にたいっす! 「谷藤! 冬山で寝たら死ぬぞ! 起きろ!」ぼんやりと中村の声が聞こえた気がした……。いや、もう死にたいからいいや……。コンッ。

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