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ふじのたにこそ ~陰キャのおれがクラス一人気の陽キャ女子にパンツの色を聞かれた話~  作者: じゅくうちょ
おまけ

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二人が出てった後の適塾で①

第2章 第7話のあとのお話

「それにしても谷藤の奴、とっとと観念して送っていけばいいのに、なかなか手ごわかったな」


「そうですね。まさか知らない人まで含めて八人もかかるとは、谷藤も往生際が悪かったですね。しかし、なんですかね、あのクロギツネジャパンの人とか、初めて見ましたよ」


「ゲヘヘー、俺様は妙齢のマダムが気になったぜ」


「キィーッ、中島守備範囲広すぎぃ!」



「塾長、ところでさっきの今野さんの短歌ってなんだったんですか? なんとなくラブレターかなとは思ったんですが、僕の力では解読できませんでした」


「ゲヘヘー、俺様もだぜ」


「二人ともまだまだだな。仕方ないな、この塾長が解説してやろう。ではまず最初に、谷藤と今野さんの短歌のやり取りの流れを理解しておきたいな」


      名にし負わば 

      いざこと問わん 

      陰キャふじ 

      なのしたごろも 

      何の色かと


「まずこれが、今野さんの最初の問いかけだ。『陰キャふじって名前なんだから色々隠してんだろ。この際テメェのパンツの色と共に洗いざらいぶちまけちまえよ』まあ無理やり解釈してこんなところかな。ちなみに古語では『な』だけで『あなた』って意味があるからな。ただし、目下の人とか親しい人に使う言葉だ。『テメェ』って感じかもしれない」


「谷藤は完全に見下されてますね」


「ゲヘヘー、俺様も見下されたいぜ」


「しかし、罰ゲームとはいえ何がどうなって、こんな質問の仕方になったのかは本人に聞いてみたいな」


「さすがにそれはセクハラですよ。犯罪です」


「キィーッ、純粋な知的好奇心だ! まあそれはさておき、この歌に対する谷藤の素晴らしい返歌がこれだ」


      秘してこそ 

      下のこころも 

      勝りけれ

      桜待つ日の 

      気に似たるかも


「これを数秒で考えて返したのは驚異的だ。あらかじめ準備してあったのかと疑いたくなるな。『隠すからこそパンツの輝きも誰かへの恋心も強くなるのです。桜が咲くのを待っている時の気持ちに似てますよね』ちょっと強引に解釈してこんな感じかな」


「さっきも言いましたが、お見事ですね。谷藤とは思えませんね」


「で、これに対する今野さんの返歌がさっきの桃色の便箋に書いてあったやつだな」


      ひしてこそ 

      つれなききみは 

      いふなれど

      ふじのたにこそ 

      さかまほしけれ


「最後の『さかまほしけれ』が意味わかりませんね。それ以外はなんとなくわかるんですが」


「ゲヘヘー、『サッカー仲間』、略して『さかま』が欲しいんだろってことじゃねぇか? あいつの友達全部かき集めても一チームもできなそうだし」


「中島、そんなわけないだろ。谷藤にだってそのくらい友達いるだろう」


「でもあいつこの前、『クラスではアイと空気だけが友達さ』とか、かっこつけて言ってたぜ。ちなみにアイは英語の『 I 』だってよ」


「自分と空気だけが友達か……。実質友達ゼロだな……」


「自分を友達にカウントする人いるんですね。初めて聞きました」


「ゲヘヘー、俺様は空気が友達とか言うやつも初めて目にしたぜ」


「だけど、それ谷藤が二年生の時の話だろ。三年になってからは、幼馴染の中村君とも一緒のクラスになれたって言ってたし、あと学校以外も入れたら、友達けっこういるんじゃないか? えーと、俺だろ、中島だろ、神崎だろ、えーと、親友の中村君だろ、あとはえーと、俺、中島、神崎、俺、中島、神崎……」


「気持ち悪いおっさんまで友達に入れて、適塾三回転しても計10人で、サッカーやるには足りませんね……」


「キィーッ! 俺は気持ち悪いおっさんじゃない!」


「ゲヘヘー、きもいおっさんはどうでもいいとして、谷藤本人がいるからちょうど11人じゃね?」


「中島よく気づきましたね! では僕たちはそれぞれ三人に分身しましょう。さっそく明日から影分身の特訓ですね」


「いやいや待て待て、なんの話をしてるんだ! 谷藤がいないと永遠に横道に逸れていくんだから、誰か止めろよ。あと俺は気持ち悪くないからな」


「塾長は普段、話が永遠に横道に逸れていくことを自覚してたんですね。令和一の驚きです。あと、しっかり気持ち悪いですよ」


「キィー持ち悪くないったらない! それに俺がしゃべってると、いつもお前らが話そらしてくんじゃないかよ!」


「そうですかねぇ?」


「キィーッ、そうだよ! で、話戻すぞ! そもそも『さかま』はサッカー仲間じゃないんだよ!」


「ゲヘッ! なんだってー?! 今世紀一の驚きだぜ!」


「中島、驚きすぎだ!」


「ゲヘッ! わかったぜ! 蹴鞠仲間だろ!」


「違うわ! サッカーを古文ぽくしても無駄だ。だいたい切るところが違う。『さか』と『まほしけれ』で分けるんだよ」


「『まほしけれ』で一語なんですか?」


「そうだ。『けれ』まで含めて、助動詞『まほし』の已然形いぜんけいだ」


「なぜ、文末なのに終止形じゃないんですか?」


「ゲヘヘー、『ぞ、なむ、や、か、こそ』があると、係り結びで文末の形が変わるんだよな。どっかで習った気がするぜ!」


「中島、珍しく冴えてるな! でも、どっかってここだろ。俺が教えた気がするぞ。……いや待てよ。中島にはパ変とか適当な嘘しか教えてない気がする……」


「ゲヘェー。パ変て適当な嘘だったのかよ。ひでぇよ」


「中島もさすがにそれは嘘だと気づきましょうよ。はいはい先生、横道逸れてますよ」


「おっと危ない。話を戻すぞ。助動詞の『まほし』の意味は主に願望だ。『〜したい』ってことだ。英語で言うと『want to 』だな。余談だけど、なぜか古文って英語とリンクさせて覚えると頭に残りやすい気がするぞ。お試しあれ。『をかし』は『interesting』で『あはれ』は『pity』とか。まあ完璧な英訳はできないから、大雑把だけどな」


「何真面目に教えてるんですか。塾長にそんなもの求めてませんからね」


「キィーッ、ここは学習塾だ!」


「で、『さか』はなんなんですか?」


「キィーッ、実は神崎やる気あるぅ。そうだな、『さか』はもちろんサッカーではなく『咲く』の未然形だ。つまり『さかまほしけれ』は『ぜひ咲きたいものだ』ぐらいの意味だな。係り結びはだいたい強調の意味だから覚えておくように」


「てことは、全体の意味はどうなるんですか?」


「そうだな、あと『つれなき』はノリが悪いとか付き合いが悪いとか塩対応だとかそういう意味だな。それらを踏まえると、『隠すからこそいい、なんていつも無愛想なあなたは言うけれど、富士の谷でだったらぜひ咲きたいと思ってるんだけどなぁ』こんな感じの解釈になるんじゃないか」



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