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ふじのたにこそ ~陰キャのおれがクラス一人気の陽キャ女子にパンツの色を聞かれた話~  作者: じゅくうちょ
第2章 新たなる適塾生?

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第2話 バカなんですか

「じゃあ谷藤、これがチケットだ。これでネタバレのことは許してくれよな」

 塾長が茶封筒の中からランマスのチケットを二枚と財布の中からドリンクセット無料チケットを取り出しておれに渡してくる。


「映画のチケットは一枚でいいっすよ。塾長と同じで一緒に行く相手が見つからないですし」

 さすがに申し訳なく思ったので、少し遠慮して一枚返却しながら言った。


「キィーッ、相手が見つからないだけなんだからな!」

 塾長が怒る。しまった! いつものくせで余計なことをつけ足してしまった。


「だから谷藤はそう言ってるじゃないですか。塾長はバカなんですか」

 神崎先輩が冷たく塾長に言う。


「おいっ、神崎! さすがに先生に向かってバカはないぞバカは!」

 まずいっす。塾長が「キィーッ」と言わない時は本気で怒っている可能性が高い。適塾で生き延びるためには必須の知識だ。




       ******




 適塾に入りたての頃、神崎先輩が言っていた。

「いいか、谷藤。普段おとなしくて優しそうな人ほど本気で怒ると怖いんだ。ここの塾長がまさにそれだ」

 おれは適塾に入って以来、塾長が本気で怒ったところを見たことはない。タメ口でも、ちょっと失礼なことを言っても、基本ニコニコと嬉しそうに反応してくれる。こんな優しい人ほかにいないんじゃないかとすら思っていた。


「僕は本気で怒られたことありませんけど、中島は何度もやらかしてますね」

 中島先輩なら納得だが、彼は塾長の逆鱗に何度も触れているらしい。


「ゲヘヘー、ギリギリ怒られるか怒られないかのラインを攻めるのが興奮するんだよな」

 この先輩は本当にメンタルが強い。おれだったら一回怒られただけでトラウマになりそうだ。


「でも中島が何度も怒られてくれたので、傾向と対策はつかめていますよ。おかげで塾長を怒らすことがかなり減りました」

 そう言って神崎先輩はスマホの写真を見せてくれた。


       ______

 

 塾長攻略マニュアル(怒らせずに快適に適塾ライフを送るために) ※マル秘!  


 まず、「刑法に触れること」、「他人の勉強の邪魔」は一発アウト。間髪入れずに大声で謝罪しよう。早ければ早いほど、声が大きければ大きいほど効果的。一度噴火すると面倒臭い。怒りが爆発する前にとっとと謝ろう。怒りが大きすぎる時は土下座が効果的。

 

 それ以外では塾長の様子を常に伺って警戒を怠らないように。以下が目安です。


・警戒レベル0

 塾長が「キィーキィー」と、よく鳴いている時は基本何を言っても大丈夫。


・警戒レベル1

「キィーッ」の音が高くなる。頻度が少なくなる。


 微妙に「キィーッ」のキーが高くなったら噴火の予兆です。まだまだ余裕はありますが気は抜かないように。また「キィーッ」の頻度が少なくなってきたら注意。初心者はここで引きましょう。


・警戒レベル2

「キィーッ」と言わなくなる。普段「キィーッ」と言いそうなところ(通称キィーポイント)三連続スルーが目安。

 

 ここまで来るとかなり危険です。慎重に様子を伺いましょう。中級者でもこの時点で引きましょう。


・警戒レベルMAX

 自分のことを笑いなしで「このおっさん」とか言う。


 怒気を含んだ声で「このおっさん」とか言い出したらMF5(マジで噴火する5秒前)です。もう手遅れかもしれませんが、あらゆる手段で噴火を防ぎましょう。


      ______


      ******



 神崎先輩! 警戒レベル1っす。注意してください!


「言ってませんよ」

 えっ! 神崎先輩!? 煽っちゃだめっすよ!


「言ったじゃないか! 塾長はバカだって。先生はちゃんと聞いたぞ」

 塾長の顔が怒りで赤くなっていく。おれも聞いたっす。先輩謝って! 噴火するっすよ!


「塾長がバカだなんて絶対言っていませんよ。僕は『塾長はバカなんですか』って言ったんですよ」


「一緒だろ!」

 塾長がますます興奮してきた。これでキィーポイント三連続スルーで、警戒レベル2がほぼ確定っす! ど、どうするんすか先輩!?


「僕が師と仰ぐ塾長は日頃からよくおっしゃってますよね。言語コミュニケーションでまず大事なのは肯定文と否定文と疑問文の区別をつけることだって。


『人を殺しました』

『人を殺してません』

『人を殺しましたか』


この区別がつけられない、またはその区別する重要さがわからない()()とはまともにコミュニケーション取れないぞ、と。で、僕はなんて言いましたっけ?」

 冷静に神崎先輩が塾長に質問する。


「塾長はバカなんですか」

 少し興奮がおさまった塾長が素直に答える。早くもすっかり神崎先輩のペースだ。


「これは肯定文、否定文、疑問文のどれなんですか?」

 神崎先生が続けて質問する。


「疑問文です」

 生徒兼塾長が答える。


「よくできました。ではもう一度言います。ちゃんと答えてくださいね。僕の敬愛する塾長は、()()なんですか?」


「いいえ、違います」


「Are you stupid? 」

 なぜか神崎先生がもう一度英語で尋ねる。


「No, I`m n()o()t()

 生徒兼塾長が「not」に力を込めて答える。


「All right!  僕の尊敬する塾長がバカなわけないですもんね。確認できて良かったです」


「おっ、おう。先生は神崎のことを誤解していたよ。ごめんな」

 気がつくと塾長の方が謝っている。警戒レベル2を簡単に押さえ込んだ。恐るべし神崎マジック!


「ゲヘヘー、先生は独身なだけで、バカじゃないもんな」

 中島先輩が余計なことを言う。


「キィーッ、犯罪!」

「独身禁止法で逮捕ですね」

「キィーッ、神崎ィー!」





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