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ふじのたにこそ ~陰キャのおれがクラス一人気の陽キャ女子にパンツの色を聞かれた話~  作者: じゅくうちょ
第1章 最高の返答を求めて

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第11話 パンパンツ

 


     ******



「ゲヘッ、いい、その子いい!」

 中島先輩が興奮して急に言う。


「僕もその子いいと思いますね」

 神崎先輩も言う。普段神崎先輩は中島先輩のことを「勢いはあるがセンスはない」と評している。名指しはしていないが、「下ネタを連呼するやつって知的レベルが低そうで、僕はあんまり好きじゃないですね」ともよく言っている。なぜか中島先輩の方が学業の成績が良いのが皮肉だが、概ね神崎先輩の意見には納得だ。その滅多に意見の合わない二人の意見が合った。


「えっ、まさか今野のことっすか? 何がいいんすか、性格最悪っすよ」

 神崎先輩の意見に納得がいかないのは初めてかもしれない。


「ゲヘヘー、そのきつそうな性格で、『パパ』、『ママ』呼びって萌えね? その性格だったら『クソババア』とか、『クソジジイ』とかだろ。俺様は上品だから家だとママ呼びだけどな」

 中島先輩がいらない情報も含めて言う。中島先輩のママ呼びの方が違和感あるっす。


「珍しく同意ですね。それに母親代わりをしているのがポイント高いですね。弟の世話までしていて、家ではとても家族思いの良い子だというのが伺えます。外で性格きついのはきっと演技ですよ。片親だからと舐められないようにと、弟のために強い姉でいようとするという母性の表れだと考えられます。実はいい子パターンの可能性がかなり高いですね。谷藤もよく考えないで人のことを決めつけるのは良くないですよ。まあ、本当に悪い子だという可能性があるのは否めませんが」

 

 おれはハッとさせられた。神崎先輩の指摘があっているのかは全くわからないが、今までも、このループ中もおれはそんなことを考えたこともなかった。言葉の字面や外見や態度だけで今野のことを判断して、今野の言葉の裏や内面なんて想像したこともなかった。


 いや、今野に限らず、自分以外の人間全てにおれはそういう態度だった気がする。知ろうともせず、なんでも勝手に自分の中で決めつけて、高い壁を作って自分の中に籠っていた。

 

 色々知った結果、やっぱり、いやなやつだったり、自分とは相容れないやつだったりすることはもちろんたくさんあるだろう。でも、知る努力を全くしないで決めつけるのは間違っている。


 修学旅行前のおれだったらこういった考えに納得いかなかったと思う。でも今は、以前のおれの態度は間違っていたのではないかと考え始めている。これも成長しているのだろうか……。そんなことを考えて、もう少し今野に対しての先輩二人の意見を聞きたいなと思ったが、空気の読めない塾長が、話を元に戻した。


「しかし、それは想定外だったな。まさか先に言われてるとは。でも、『マジ超ブルー』、どんな色かは気になるな」

 塾長! やっぱり気になるんすね。


「僕もそれは気になりますね。人間の知的好奇心は尊いので、それはスカートをめくったとしても正当防衛が認められるんじゃないですか」

 神崎先輩、やっぱり正当防衛が認められるんすね!


「ゲヘヘー、俺様だったら逮捕覚悟でめくっちまうけどな」

 おれにはその覚悟がなかったっす。かっこいいっす中島先輩! っておい!


「中島、犯罪だぞ!」


「ゲヒーン、塾長だって気になるって言ってったじゃん。生徒を操ってスカートをめくらせるなんて、塾長の方が罪重いだろ。おっさんだし」


「そんなことするかー! あと、おっさんだしは余計だ! それに、今ひらめいた。先生、色わかっちゃったもん。見る必要ないもん」


「見もしないでわかるわけないでしょ。あいかわらず何言ってるんですか」


「キィーッ! わかったもん。絶対わかったもん。谷藤、その子の名前なんだっけ?」


「今野っすよ。それがどうかしたんすか?」


「ふっふっふっ、そうだろ『こんの』だろ」

 

「だから何なんですか?」


「つまり『紺の』パンツだ!」


 ほんとにこのおっさんはつまらない……。


「「さっ、真面目に勉強しよっと」」

 神崎先輩と中島先輩が塾長の100回のうちの99回の1つを完全にスルーした上に声を揃えて言った。普段全く意見の合わない二人だが、奇跡的にまた揃った。でも、このまま勉強に戻られては困る。おれは脱線しすぎた流れを元に戻す。


「まあまあ、それはさておき、おれはなんて答えれば良かったんすか? 普段からなんでも質問しろって言ってるじゃないすか」


「キィーッ、『なんで結婚できないんですか?』以外だからな!」

 もはや自分から言ってるぞ、このおっさん。


「まあまあ、それはさておき、正解は?」


「正解はもう出てるぞ、谷藤」

 今回は何も悩まずに塾長が言った。 このループ中塾長がこんなことを言ったのは初めてだった。


「えっ、何ですか?」


「どんな理由があって『かつての』親友なんだか知らないが、その中村君が教えてくれてるじゃないか。短歌だよ短歌。しっかりクラスの笑いも感心も取ってたんだろ?」

 あっ、そうか!


「京都といえば平安時代に貴族が短歌のやり取りをしているというイメージがあるので、そこに行っていたという流れを考えると正解の一つでいいんじゃないですか。実際にウケていたみたいですし。ただ、あとは内容ですね。これは結構難しいですよ」

 神崎先輩も塾長に賛同して言う。


「ゲヘヘー、


      パンパンツ 

      パンパンパンツ 

      パンパンツ 

      パパパパパンツ 

      パパンパパンツ 


これでどうだ! 谷藤!」

 これでどうだ! って言われても!


「とにかく犯罪だ! 黙ってろ中島!」

「四五七五七七で短歌にもなってないですね。犯罪です」

「ゲヘッ、最初の『ゲヘヘー』は文字数に入れないでくれよー」

「でも、犯罪な」

「同意です」




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