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蝙蝠の歌  作者: u
2/5

僕は飢えていた



-1♭-



高校1年の秋。



僕はサトウさんに振られた。



人生で振られたことはなかった訳ではないが、初めてはっきりと振られた。



思えば今まで恋愛をいくつかしてきたが、手口としてはお世辞にも上手ではなかった。いや、ある意味上手だったのかもしれない。つまり姑息だった。


きっと家族内から愛を受け取れていなかった僕は、本能的に“媚びる”ということが身に付いていた。しかしこの時の僕は、この行為を卑しい行為とは微塵も考えていなかった。むしろ媚びて愛を欲しがっているのだから、謙虚な行為とさえ思っていたかもしれない。いわゆる八方美人。誰にでも良い顔をしていた。

そんな八方美人が、特定の1人の女子に恋をした時、その男が取る方法は非常に簡単だった。自分の弱みを少しだけ見せれば良いのだり多分には必要ではない。ほんの欠片ほどの弱みを見せる。そうすると相手はどう思うか。僕を心配する…のがごく普通の建前であるが、その中には「自分にだけ話してくれた」という特別感を植え付けるのだ。あとは普段通りにしていれば、相手は「あの人の本当の部分を知っているのは自分だけ」という優越感に浸って、勝手に恋心が芽生える。あとは、機を待てばいいだけである。

僕は、きっと恋愛を何かのゲームのような感覚をずっと持っていたのかもしれない。


逆に、自分に好意を寄せてくれる人を感覚的にわかっていた。そういう女子が僕と話したりメールのやり取りをする際、僕は相手に少々の好意を垣間見せた。相手にその好意を見せつつ、告白できない距離感を保って、ただ相手が恋愛しているだけの状態を作るのが好きだった。

この時の相手の容姿や性格などは全く考慮しない。どちらかと言えば、世間的に劣っている部分がある者の方がやりやすい。その部分を肯定することが相手への好意的な態度になるからだ。この場合の“肯定する”という言葉は、励ます、や全肯定するという訳ではない。相談されればいくらでもするが、思春期の女子が異性にコンプレックスの話など簡単にできるはずがない。つまり、意識しないのだ。全く意識しない。話題にも出さなければ、逆に意識していないから話題を出す場合もある。「気にしていない」ということを相手にさりげなく伝えることが相手への肯定になる。こうやって、相手の心を掴んでいく。この“手口”で僕は同級生以外にも後輩、部活のOG、兄の同級生から好意を持たれていた。

そして僕はこの、“自分に好意を抱いてくれた人達”と恋愛的に発展する気など毛頭なかった。

相手から好意がある時点でもう自分の中で何かハードルのような障害が無くなってしまっている。正直にいうとつまらなかった。


なぜこんな手の込んだことを好んだのかはわからない。恐らく現代で言うところの"自己肯定感"を高めたかったのだろう。いや、確定的に誰よりも激しくそれを求めていた。そういう存在を何人もそばに置いて、僕は愛されたかったのです。




ただサトウさんは別だった。始めから僕に全く興味がなかった。たぶん、それが良かった。

自分に興味のない人を好きにさせるような、そんな感覚。またしても恋愛ゲームでもしているつもりだったんだろうか。傲慢で図々しい男でした。


好きになった理由は勿論それ以外にもあった。顔も整っていたし性格も天真爛漫だった。男子からの人気も高かった。だが、「僕に興味が無い」というところに僕の心は1番動かされていた。




そして、見事に振られた。至極当然である。こんな感覚の持ち主が誰かから愛される訳もない。

今まで、自分に好意を抱いてくれた人は一般的には多い方だと言えた。が、本質的には誰からも愛されていないし、この頃の僕はそのことにも気付かずただゲームを繰り返していた。


なので当然、振られた割にショックな感情や失恋の感情は無かった。僕はこの頃から心が壊れていたんだと思います。




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