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第67話 俺も進まないと。


 家に帰り、凛とリビングに下りる。

 すると、雫さんが紅茶を入れてくれた。


 テーブルに4人でかけた。

 目の前には親父、その横には雫さんがいる。


 俺の左横には凛。

 凛は緊張した面持ちで、前を見つめている。


 沈黙が訪れ、カチカチと秒針が響く。

 座ったら、その勢いですぐに切り出そうと思ったのに、口が鉛のように重い。


 でも、時間が経っても軽くなるわけではない。早く言わないと。


 すると、親父が口を開いた。

 いつになく低い声だった。

 

 「それで、話しって?」


 言わないといけないのに、言葉が出てこない。

 自分の小心者具合が情けなくなる。


 俺は右手で自分の右太ももを思いっきりつねった。


 「……俺は凛のことが好きだ。結婚を前提に付き合いたいと思ってる」


 親父は唸るような声を出す。


 「あ? お前。自分が何いってるのか分かってるのか?」


 「ああ。分かってるつもり」

 俺は物怖じして逃げ出したい気持ちを無理矢理押さえ込んで答えた。


 「義理でも姉弟で付き合う意味のことだ。お前らが思ってるより、世間は冷たい。心無いことを言われることも多いだろう。お前はいい。だが、凛ちゃんは? お前、凛ちゃんを守れるのか?」


 「そのつもりだよ」


 親父は語気を強める。

 「つもりじゃない。俺は、できるかを聞いてるんだ」


 「できる。命懸けでやってみせる」


 「意気やよし、と言いたいところだがな。どうやって守るんだ?」


 沈黙が訪れた。

 数十秒だろうか。


 胃がキリキリとして、吐きたくなった。



 「ふぅ」


 親父がため息をついた。


 すると、雫さんが場違いな笑顔で手を叩いた。


 「ね? らいさん。言った通りでしょ?」


 雫さんは俺にも話しかけてきた。


 「れんくん。まだ16でしょ? その年で一生の相手を決めてしまっていいの? これから凛より魅力的な相手に出会うかもよ?」


 「いえ。俺にとっては凛は世界一です。たとえ、女優さんが相手でも、凛より可愛い人がいる訳がありません」


 「そっか。凛、よかったね」


 雫さんは凛に微笑みかけた。

 親父がため息まじりに言った。


 「雫さんの言う通りになっちゃったな。まぁ、それにしても、蓮にそんな度胸があるとは。少しは大人になったな」


 親父は続けた。


 「れん。雫さんに言われててな。遅かれ早かれ、こんな話がくるとは思ってた。コソコソせず、堂々と宣言したことは偉い。でもな、ここからが大変だぞ? さっきの答え。どうやって守るのか。しっかり考えておけよ」


 雫さんが言うには、一宮家は現在、跡取りがいない状態で、凛に白羽の矢がたってるらしい。このまま凛の祖父の思惑どおりにいくと、凛はいずれ一宮に姓を変えさせられて、然るべき結婚相手をあてがうつもりということだった。


 法的には凛の祖父の意思を無視することはできるが、それでは筋が通らないというのが、親父の意見だった。


 親父は、俺と凛を交互に見つめて言った。


 「雫さんの……義父さんを納得させることが、俺たちが2人を認める条件だ」

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