第42話 凛とお風呂。
「えっ?」
俺は間の抜けた声を出してしまった。
「……だから、お風呂で背中流してあげようかなって」
それって、凛は服を着てってことだよね。
まぁ、俺はタオル巻いてるし、大丈夫かな。
「入るよ」
凛は俺の返事を待たずに、中に入ってきた。
狭い脱衣所に2人きりだ。
なんか人口過密なんだけど。
凛は……服を着ていた。
よかった。安心したけれど、少しだけ残念かも。
「ちょっと、あっち向いてよ」
俺が背を向けると、なにかスルスルと音がしてきた。もしかして、凛、服を脱いでるのかな。
「もういいよ」
振り向くと、凛はバスタオルを身体に巻いていた。髪の毛もタオルで纏めていて、なんだか新鮮だ。
浴室の扉をあけると、湯気が立ち込めていた。
うちの風呂はユニットバスなので、2人で入るには手狭だが、今日は、むしろ狭さが嬉しい。
まずは、身体を洗ってもらうことにした。
俺が椅子に座ると、凛は背後で側に膝立ちになった。
「絶対、こっち向かないでよね!」
俺もさすがにこの状況で後ろを向く勇気はない。
凛は俺の背中にシャワーでお湯をかけてくれる。そして、スポンジに泡をたくさんたてて、背中をゴシゴシと擦ってくれた。
お次は、桶でザザーっと泡を洗い流してくれる。今度は、腕や横腹の辺りも洗ってくれた。
これ。普通にいいかも。
なんだか思いの外、癒しの時間だ。
凛は上から下に順に洗ってくれる。
いよいよ、スポンジが俺の内腿あたりまできた。もしかして、股間も洗ってくれるサービス付きか?
すると、凛の手が止まった。
少し悩んだ末、「ここは、自分で洗って」だって。そこまで甘くはないらしい。
凛のスマホが鳴った。
「メッセージだ。ちょっと確認していい?」
凛が脱衣所に手を伸ばして、スマホを取ろうとする。
凛が「あっ」と言う声を出し、スマホが浴室の床にカランカランと落ちた。
「どうした? 凛」
俺が振り向こうとすると、凛がギュッと身体を俺の背中に押し付けてきた。
「ち、ちょっと。こっち向かないで! バスタオル外れた……」
えっ。じゃあ、俺の背中に当たってるのって。全裸のリン?
俺は目を閉じ全神経を集中する。すると、肩甲骨のあたりに乳首らしき突起が2つ当たっていた。
うちの洗い場は2人には狭いのに、凛が身体を密着したままタオルを巻き直そうとするから、俺の背中に凛の胸が擦り付けられる。
やばい、下半身が大変なことになってしまった。俺は俺で、男の事情で今は立ち上がれない。
凛が少し苦しそうに言う。
「れんくん。ちょっと。そのまま前に移動して、脱衣所に行って……わたし裸で動けないから」
「いや、無理だって。俺も今、立ち上がれない」
「なんでよ!! 前に行くだけじゃない」
「だから、男の事情で……」
数秒の沈黙の後、凛は視線を下におろした。そして、盛り上がっている俺のタオルの頂きに気づいたらしい。
「ひゃんっ」
凛が謎の声をだし、立ちあがろうとする。すると、シャワーヘッドに頭をぶつけ、滑ってバランスを崩した。
俺はびっくりして振り向いた。そして、咄嗟に凛を支えようとして、右腕で凛のウエストのあたり、左手で凛の頭を守ると、凛の重みで一緒に転んでしまった。
シャワーヘッドがカランカランと床にシャワーを撒き散らし、あたりに湯気があがる。
両手が凛と床に挟まれて痛い。
でも、よかった。凛を守れたみたいだ。
「イテテ……」
目を開けると、凛の顔が目の前にあった。
俺は両手で凛を支え、凛の上に膝立ちで跨っている。凛の頭のバスタオルは外れ、ツヤツヤの黒髪が、浴室の床に敷き詰められていた。
凛の湯気で上気した頬が鮮やかなピンクに染まって色っぽい。凛の半開きの唇に吸い寄せられそうになる。
視界の端には、凛の小ぶりでピンクの乳首が見えていた。
「ごめん」
俺が身体を離そうとすると、凛が抱きついてくる。
「だめ。身体を離したら、わたしの全部見えちゃう」
そんなこと言われたって……。
それに、この状況。石鹸でヌルヌルの凛の身体が押し付けられて、理性を保てない。
すると、凛が耳まで真っ赤にしてモゾモゾしだした。
「ちょっと。レンくんの硬いの、わたしの脚の間に当たってるっ……」
だが、俺が身体を離そうとすると、凛はすごい勢いで抱きついてくるのだ。これどうしたら……。下半身には凛の股間に擦れる感覚があるし、なんかヌルヌルしてる。石鹸かな。下手に動いたら、入っちゃいそうなんだけど。
「しかたねーじゃん。こんな可愛い子が目の前にいたら、興奮するって……」
実際に今の凛は、とてつもなく色っぽい。
すると、凛が甘えた声になった。
「れんくん。わたし、変な気分になってきちゃった。なんか脚の間がじんじん熱いの。れんくんが変なの当てるから……これだけでも、あかちゃんできちゃう?」
「りんっ」
俺は凛の両手首をもって、床に押し付けた。
凛の胸が視界いっぱいに露わになる。
両腕が上がられ、目の前で凛の胸がぷるんと揺れた。思った以上に大きく、真っ白でまあるく整ったかたちをしている。
エロいというより、それは美しかった。
凛がハァハァといいながら囁く。
「わたし、はじめては両想いがいい。れんくんが気持ち教えてくれるなら、しちゃっても……いいよ」
「なら、凛の気持ちも聞かせろよ」
凛は照れくさそうにはにかむと、瞳を潤ませ、とろんと目尻を下げて、息を吐き出すように口を半開きにした。
「わたしは……」