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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

蝶と悪魔

作者: 墨 作楽

寝てた時に面白い夢を見たので文字起こししました。

長編で書きたいのでモチベ上げのためにまずは短編で投稿します

◇□◇□◇□


肺が焼けるように苦しい。息は焦りと不安、そして恐怖ゆえに荒いままだ。身を潜めなければならぬというのに、どうしても息を殺せない。


情けない。当主様も次期当主様も、もう死んでしまった。里が報せを受けた際、当主代理として一族を束ねることができるものは、最悪なことに里の中に居らず、混乱の中で、意見は割れに割れた。


「獏家が裏切ったなど信じられぬっ!我らは同じ日辻家に仕えるもの。敵は櫛羅家ではなかったのかっ!?」


「当主様は本当に身罷られたのか!?」




そんな混乱の中で、私が指示されたのは、里の子どもを直ちにここから避難させよとの命だった。…一族の血を絶やしてはならない。


事は既にその段階にあると残されたものは悟っていた。蝶家は滅ぼされるのだと。




こんなはずではなかった。獏家の謀りによって、我が蝶家は、裏切り者の汚名を着せられた。汚名をそそぎ、獏家を皆殺しにせねばならない。しかし、それよりもさきに、追手から一族の子供を一人でも多く逃さなければならなかった。


蝶家の子どもは訓練をうけており、そこらの子どもより体力があるとはいえ、それでも、休息なく進むことはできない。つまり、追手を振りきることは出来なかった。


徐々に、供の者どもが減っていく。身を挺して時間を稼ぐも、相手は数を誇る獏家だ。いや、他の勢力もあると感じた。


この時、蝶家は戦を主導していた元凶として、先の戦のあらゆる汚濁を押し付けられてしまっていたことは、知るよしもなかったことだった。




屋敷の主を術で脅し、押し入った。


…この屋敷の主とは、よい関係にあると思っていた。本当は数人を受け入れてもらうつもりだったのだが…。一体何を信じればよいのか。蝶はここまで落ちたのか。


動揺も不安も見せてはならない。


「…殺しますか」


供が屋敷の主をちらと見ては聞いた。それに逡巡し、首を横に振る。


「術で夢に沈めなさい。…時間が惜しい。」


「では、異界招きを行います。」


対象の夢を異界へと固定させ現実がどちらか混乱させる術だ。程度により、対象は異界から還ってくることが出来ないという恐ろしいが子供でさえ扱える初歩の術だ。






よもや獏家が裏切るとは誰も思っていなかっただろう。何故なら、蝶家と、獏家は同門であり、同じ日辻家に使えているからだ。いや、もう少し深く掘り下げると、我ら蝶・獏・日辻の三家は、櫛羅家を共通の敵だと見なし、戦の準備をしていた。そのはずだった。




羊は夢を見せる 獏は夢を喰らう 鯨は夢を渡る と言う。


日辻は羊と読み、櫛羅は鯨と読む。この二家は、貪欲に、他勢力を取り込み巨大になったがゆえに、名を多少変えたのだ。


蝶と獏はその二家に比べると弱小のため名を変えてはいない。






夢とは手に取ることのできない儚きものだ。人とは弱き生き物。夢を失くして生きてはゆけないのだ。


騒乱の時代、2人の皇子によって国は引き裂かれ、どの家ものらりくらりと2人の皇子のどちらにも明確にはつかなかった。そして、戦火が下火になるまでうまい汁だけを吸った。勝敗が明確についたとみると、次に気になるのは、櫛羅の動向であり…


そんな状況下で、幅を利かせることができるのは、仙術を扱えるかどうかだった。


「夢術」


今、時の権力者が喉から手が出る程欲しいだろう術。戦況を容易くひっくり返すことができる術は、敵となればこの上なく恐ろしいが、味方に引き入れれば勝ちに近づくからだ。


そして、それを持つものたちは、もう推測がついただろうが、日辻、櫛羅、獏、そして、我ら胡蝶だった。


「夢術」といっても1つではない。それぞれが、独自の方向に術を発展させている。


分かりやすいものは日辻と櫛羅か。


羊は夢を見せる。つまりは、日辻家は幻術による撹乱を得意とする。存在しないものを存在させ、逆に存在するものを消し去る。日辻の幻術は、もはや幻術ではなくただの現実だと言った方がよい。あれは実際に術にかからねばわかるまい。


鯨は夢を渡る。つまりは、櫛羅家は夢渡りによって集めた情報で戦況を意のままにした。情報の伝達速度、精度は言わずもがな。何より恐ろしいのは敵方の夢でさえ意のままだということ。夢で殺してしまえば、心の臓もとまる。




反対にわかりにくいものは、獏と蝶である。


獏は夢を喰らう。文字通り喰らうのだ。




私たちは、逃げていた。





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