ライバル登場!ゲーム選挙開幕!
そして、なんやかんやあって、数か月が過ぎ、ゲーム選挙当日となった。会場には、参加者のほかに数多くの見物客、そして、テレビカメラがきていた。参加者は毎年約200人程度で、今年も変わらない。旗持ちの効果はあったかどうか、わからない。ちょっとでも、人数を減らせただろうか。
「いよいよだな」俺は、神様に声をかける。
「長かったのう。」
神様が答える。今日は、神様は俺につきっききりだ。神様は俺に付き合ってくれたり、しなかったり、まちまちだった。
数か月の間、ずっと駅前で旗持ちをしていた。その間特に変わったことはなかった。大家さんの息子さんとは、会えば挨拶をするくらいにはなっていたが、それくらいだった。
「コンドウくん」
誰かに呼ばれた。俺は、声の方向へ振り向いた。
そこには、スーツに身を包んだ大家さんの息子さんがいた。
「サンジョウさん。こんにちは。」
俺はいつも通り、挨拶した。きっといつも見ているから、応援に来てくれたのだろう。
「こんにちは。コンドウくん。」
大家さんの息子さんのサンジョウさんは、今日はいつもと違って、赤のスーツに黒のストライプのネクタイで派手に決めていた。普段は見慣れないスーツ姿だが、似合っていた。
「お似合いですね。赤のスーツ。」
俺は素直に思ったことを口にした。
「ありがとう。願掛けにね、赤にしたんだ。」
「願掛けですか。誰か応援に来たんですか?」
「いやあ、実はね。俺も参加することにしたんだ。ゲーム選挙。」
「え?」
思ってもみなかった言葉だった。そんなこと一言も言ってなかったじゃないか。
「コンドウくんが頑張ってる姿を見たら、俺も頑張ろうかなって思えたんだ。でも、ライバルになっちゃったね。」
まさか、こんなことがあろうとは。旗持ちは、俺に賛同する人を増やして、ゲーム選挙に参加する人を減らそうという企画だったのに。
「まあ、とある人の推薦というか、おすすめ?もあったんだけどね。俺は勝ちを狙いに行こうかな。あ、コンドウ君は、負けを狙ってくれたらいいな。俺と一緒に大臣になろうよ。」
俺の隣で、神様が「むかつくやつじゃ」とむきになっているのがわかる。
ニコニコしているが、この人は俺のライバルになってしまった。しかし・・・・旗持ち作戦が、逆効果になってしまったのは悔やまれるが、別に、知り合いがいたところで、どうってことはない。ただ、戦うだけだ。
「お互い、頑張りましょう。」
「そうだね。頑張ろうね。」
俺は、そっと手を差し出した。握手を交わした。ぎゅっと力強い握り方だった。
ゲーム選挙が始まる。サンジョウさんは、明確に「勝ち」を狙うと言っていた。その言葉からは、自信を感じさせた。ゲーム内容次第だが、俺は「負け」を狙いに行ったほうがいいのかもしれない。ゲーム内容がわからないのに、あの自信は俺には持てないなと思ってしまう。
それに、「負け」大臣のほうが、権力があるとの話もある。負けに行くか・・・・。いや、やはり、ここはゲーム内容が発表されてから考えるべきだ。
「ゲーム内容を発表しますので、参加者は指定の席にご着席ください。」
放送が流れた。俺は、自分の名前が書かれた席に座った。