ボランティア大臣!?
「神様、出てきてください!」
家に帰宅して、神様を呼んだ。
「呼んだかね?」
頭上から声が降ってくる。そこには、例のごとくパペット神様がいた。
よくよく見ると、なんとなくみすぼらしさを感じなくもない。くたっとした感じだ。
この神様に、なんとなく敬語は要らない気がした。
「俺この次のゲーム選挙に出馬するんだ。だから、ゲームの練習に付き合ってくれないか?」
「ふうむ。ゲーム選挙に出て、大臣になるつもりなのじゃな。しかし、それは、働くということではないか?」
そう言われてはっとする。
「俺は、働けないんだった・・・・」
どうしたことだろう。働こうとすると、またあの発作が起きるのか。いや、ちょっと待てよ。政治家って、よく働いていないって罵られてるよな。ネットの掲示板とかで、いろいろ見ていると批判されているのがわかる。
「政治家って働いていないってよく言われないか?」
神様はじっと俺のほうを見ている気がする。まだ発言権は俺にある。
「俺は大臣になって、働かない。ただ、ベーシックインカムになるように、根回しするだけだ。」
神様が文字通り、口をへの字にした。
「そこは働くところじゃ!一応国の代表ではないか!あと、それはやはり働いているのではなかろうか?」
「じゃあ、俺は給料をもらわない!それでどうだ!!」
神様にまくしたてられ、少しむきになっていた。言った後にちょっと後悔したのは言うまでもない。
「それでは、ボランティア大臣ではないか。かわいそうに。ボランティアで大臣をやるなんて。でも、わかったぞ。お前は、どMじゃな。」
パペットがパクパクと口を開けたり、閉じたりしている。どうやら神様は笑っているようだ。そして、すぐ初期の顔に戻った。
「だが、正直な話、お前がゲーム選挙に出馬するというのは、シミュレーションにはなかったことだ。出馬するだけなら大丈夫だろう。まあ、大臣になれることなんてないと思うが・・・・」
「どうしてもなりたいんだ!過労死がなくなる社会ができるかもしれないんだ!そしたら、俺はどこで何をしたっていい。魔法にも縛られない。」
そこまで言って、俺は、過労死のない社会を想像した。過労もない、過労死もない。そこは平和そのものの世界。会社に行きたくなくて吐き気がしたりすることのない世界。でも、その世界では、過労死の神様はいるのだろうか。いなくなるのが、順当か。神って消えるものなのか、どうして過労死の神様は、わざわざ過労死をつかさどっているのか気になった。
「どうして、過労死の神様は過労死の神なんだ?自分でも過労死したとか言ってたよな?」
またポロっと、口をついて出た。
3秒程間があった。長い沈黙だった。
「世の中、どれだけ過労死が多いと思っているんじゃ。過労死の神くらいいても不思議ではなかろう。」
それは図書館で見た。一応、勉強したのだ。過労死で亡くなる人の数は・・・・それは、とても大きな数字だ。
「・・・・いずれわかる。わしの過去もな。」
意味深なセリフだった。いつかわかるのか。何もかも。それまでは、目の前のことをするしかない。
ゲームするんじゃろ?とゲームをすすめられて、話は打ち切られた。