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息子といちご

「前略、はは様、就職するためにもお金が必要です。いくらか恵んでください。」

息子からこんなメッセージが届いたのはつい数か月前だ。息子の通帳には、いくらか振り込んだのだが、気づいていないのだろうか。息子からはあれからメッセージは届いていない。

我が息子のこと・・・・気にはなるが、仮にも息子だ。母が過保護になってはいけない。今就活を頑張っているのだろう。

 今日は、仕事は休みで、家でゴロゴロしていた。テレビをつけると、ゲーム選挙でどこも大盛り上がりだった。そうか、今日は選挙の日か。ゲームを使用して選挙するなんて馬鹿げているとは思うが、毎年盛り上がっているようなので、そこまで馬鹿にはできない。

今回の選挙の内容は、新型ゲーム機ストロベリーを使ったお茶あてゲームだ。なぜお茶当てなのか。それは、この国がお茶の生産に特化しているからだろうが、だからといって、お茶当てとは、安直すぎる気もする。まあ、なんにせよ、ゲーム選挙は、もともとは、ただの茶番なのだ。ゲーム好きな「国王の遊び心」とも呼ばれているが、どうなのかしら。

 新型ストロベリーは、ゲーム機だが、もともとは、嗅覚味覚障害を持つ人のために開発されたとされている。実際臨床の場では、よく使われているらしいとかなんとか。その精度は、最初こそ使い物にならなかったものの、今ではアップデートを重ね、現実をも超える精度になったとかなんとか。しかしながら、このゲーム機、そんなに普及していない。値段が高額だからだ。とてもゲーム機として買える値段ではない。だから、選挙の装置として選ばれることになったのだろうか。いつもは、もっと誰でもできるようなゲームなのにな。少なからずなんらかの利権が絡んでいるのだろう。

 にしても、ゲーム内容がちょっとひどすぎる気がする・・・・。さっきからイチゴに合うお茶だのなんのと、そんなのは、個人の主観では?と思うのだが、まあ、運もものをいうのがゲーム選挙の醍醐味、そこはやはり運ゲーらしさを出してきたのかなんなのか。ゲーム選挙は、賭け事にも利用されているからなあ。この日だけは、ゲーム選挙で誰が勝つか、負けるかに賭けてもいいことになっている。つまり、ゲーム選挙とは大多数の人にとって、賭け事選挙になるってわけだ。私は国の職員なので、そんなことはできないが。ちなみに、ゲーム選挙には、ゲームガチ勢がいて、その人たちはひたすら勝つことだけを狙っている。運要素も強いから、ガチ勢がいたとしても、なかなか勝てないというのが、ゲーム選挙の実情だ。

 しかし・・・・さっきから、息子によく似た人が画面に出てきて集中できない。これは、息子によく似た人物なんだよね?そう言い聞かせる。が、三回目に画面に出てきて、ようやく確信を持った。あれは、間違いなく、私の息子である。なぜ?と疑問に思う。私の息子は今、就活中で忙しかったのではなかろうか。もしかして、就活から現実逃避したくて、今画面に映っているのだろうか。いや、息子のことを信じなければならない。息子は今、戦っているのだ。ゲーム選挙という中で、戦っているのだ。それはなぜ?なぜ息子が戦っているのか、まったく見当もつかない。でも、結局、何か事情があるに決まっている。そうでなければ。私は、息子を信じて、テレビ画面を食い入るように見つめた。


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