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プロローグ ~戦利品は本~

ページを開いて頂き、ありがとうございます。



 私は今日も顔を顰めてその棚の一部を睨みつけた。


「ほんっとあのどぐされ野郎、やってくれやがりますわね……!」


 ひいぃっと少し後ろに控えている案内の店員がそんな悲鳴を上げたので、心の中で呟いたと思ったことが堪えきれずにどうも口からも出てきてしまったらしい。

 堪えきれなくなるのも無理はないと自分で思う。本来短気な気性の私としてはよく我慢した方だ。


「確認しますけれど。この抜けている一冊はあのど……頭にアが付いて最後にダーとなる、彼の御方が購入して行ったということで違いございませんわね?」

「……ええと、あの」

「ええ、ええ。このような辺境にある小さな書店にこそ目当ての書物があり、それも八店舗目にしてようやく侍従が探し出して予約し、公爵令嬢である私自らが忍んで足を運んで手にすべく望んだ書物を横取りすることが可能なのは、あのク……ど……頭にアが付いて最後にダーしかおりませんもの!!」


 クソと言い掛けどぐされと言い掛け、結局一番字数の多い人称代名詞になってしまった。

 不敬は口にしてはいけないだけで頭の中でどうこうするのは自由なので、高いヒールを履いた足で思いっきり煌びやかなご尊顔に向かってイマジナリーキックをお見舞いしていたら。



「――アレクと呼んでくれよ。愛おしい人」



 ここにいる私もイマジナリー私も、皆が寒き鳥のブツブツに覆われた。


「チッ!!」

「ははっ! 不敬だねエリー。ほらほら、お探しのものはこれかな?」


 足音も立てず気配もさせずに私の背後に現れたどぐされは、愛おしい人言ったその口で小馬鹿にするような生意気な顔で、私が意気揚々と手にする筈だった書物をヒラヒラとさせている。


 私、エーベルヴァイン公爵クリストフ=カレンベルクが長女エレインに相対するは、この国の第一王子にして我が婚約者、アレクサンダー=ヨアヒム=サンドロックその人であった――。



 とても認めたくない話である。


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