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Count on me  作者: 泡沫
1/3

前編

 学年末考査の席次が配られる。


 「雨宮皐月」


 私は担任に呼ばれて、席を立って成績表をとりにいく。

 雨宮という苗字のせいで、いつも最初に呼ばれることについては、得なのか、損なのか。


 一番後ろの席のせいで、歩く距離が地味に長く、はやる気持ちを抑えながら、気持ちゆっくり歩いた。


 受け取る前に、結果がチラリと見えてしまって、叫びだしたいのを堪えるので精一杯、取り繕いながら席についた。


 すると、右隣の男が、トントンと私の机を指で叩いた。


 「ね〜ぇ、雨宮サン?結果はどうだったの?」


 ソイツはニヤニヤしながら上機嫌で聞いてくる。


 「……。」


 答えるのも癪なので、無視してやった。


 そうだ、別に私の結果だけで決まるわけではない。

 いくら私の総合順位が2位だからって、この男の順位が1位とは限らないんだ。


 …けれど、そんな適当な予想があたるとも思えない、この男の顔が歪むところが、想像つかない。


 「そんなに睨まないでよ。俺、嬉しくなっちゃう。」


 周りからも、色んな声が聞こえてくる。

 成績が奮ったもの、そうでないもの、それぞれの感情を吐露し、今回の考査の感想を語り合っている。


 「変態。」


 「雨宮にだけだよ。」


 冗談に聞こえないような真剣なトーンでそんな冗談を吐いた。

 なんか、成績について緊張してないのかと意味もなく八つ当たりしたくなってくる。


 「里見慧」


 担任が呼んだにも関わらず、私の方を見ているから、さっさと取りに行くように促した。


 成績表を受け取った後、ニヤニヤしながらこちらに向かってくるのを見て、嫌な予感が外れなかったことを知った。

 ひらりと、私の目の前に成績表を見せつけた。


里見慧

現代文(理系) 1位

古文(理系) 2位

数学(理系) 1位

化学 1位

物理 1位

地理B 2位

コミュニケーション英語 1位

英語表現 2位

8科目合計(理系) 1位


 「俺の勝ち。」


 「チッ」


 私が舌打ちしたのも許して欲しい。

 けど、私の舌打ちを不快に思わないどころか、ヤツは喜んでいる節がある。睨んだり、嫌な顔したり、暴言を口にしてしまったときでさえ、ヤツは嬉しそうに笑う。いわゆるマゾ…Mなのか?いや、だからなんだというわけではないし、人の趣味嗜好はそれぞれだから、人に迷惑かけない限り、尊重したいのだけれど。


 「今度はどんなお願い聞いてもらおうか。」


 楽しそうな声に、自分の握力で少しくしゃくしゃになってしまった席次をもう1度見た。

 

雨宮皐月

現代文(理系) 2位

古文(理系) 1位

数学(理系) 2位

化学 2位

物理 2位

地理B 3位

コミュニケーション英語 3位

英語表現 1位

8科目合計(理系) 2位


 結局、奴に勝ったのは古文と英語表現の2科目だけ。

 残りの6科目と合計は負けてしまった。


 もう、何回目なのか分からない勝負。

 科目ごとに勝負して、『負けたら勝ったほうのお願いを1つ聞く』そんな単純な勝負。尚、科目合計は2つ。


 今回、私は奴の願いを8つ聞かなければならない。まあ、この鬱憤は勝ったぶんの2つでどうにかするとして。

 なんとしてでも、コイツを倒さなければ。

 高校2年も終わりだ。あと1年、里見に勝つチャンスはもう多くは残されていない。


 里見(ヤツ)と変わった勝負事を始めたのは、高校に入ってすぐの中間考査のこと。

「中編」は本日18時に更新予定。

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