正義の味方
彼女は正義の味方である。
普段は身分を隠して普通(自称)の女子大生をやっている。
「さ〜て今日も巡回するかな」
正義の味方は朝が早い、規則正しい生活をしないといけないのだ。
巡回タイム
そう、正義の味方は町の安全のため、徘…見回るのです。
「ふわぁ〜今日の講義は昼からだからもうちょっと寝ようかな」
規則正しくなかったみたいだ。
「こらぁ早く起きなさい」
大学生にもなって母親に起こされる正義の味方。
「ん、もう仕方ないなあぁ」
むくりと起き上がった彼女はそれは本当に適当に、髪の毛をさささと手櫛でとかし、またまた適当に洗顔し、歯を磨いた。
ご飯を食べて、「ふぅ一服」
なんともゆるい正義の味方である。
「さぁて、巡回たい〜む」
やっとやる気になったようだ。
てくてく
町を見回る正義の味方。
(あ、お巡りさんがいる。正義のヒーローだ、味方しないと)
「お勤めご苦労様です」
ムショがえ…服役中か!
もうお気づきかもしれないが、彼女は正義の味方である、が。
一般的には正義の味方とは「弱者を救い、悪者をこらしめる人」の事を指すのだが、彼女は「正義つまりヒーローに味方する(ヒーローを応援する)人」と解釈しているのだ。
てくてく
巡回中の正義の味方。
「人気のないところだな、注意しないと」
ゆっくり歩出してキョロキョロと見回す正義の味方。
「あ、あんな所に人が」
路地裏に、四人ほどの男の子が集まっている。
中学生くらいかな。
「お前何とか言えよ」
「マジ、ウゼーんだよ」
もめているのか、いじめてるのか?
「あ、問題発生だ」
彼女はたたたと近づき。
「誰かぁ〜ヒーローいませんかぁ〜」
物凄い大きい声で叫びだした。
「なななんだ」
「誰だ」
「知らない」
少年たちは、びっくりして固まってしました。
「お、お前は誰だ」
リーダーらしき少年がビクビクしながら聞いてきた。
「私は正義の味方よ、誰かぁ〜ヒーローいませんかあぁ」
3〜4人の大人の人が集まってきた。
「わ、に、逃げろ」
少年たちは一目散に逃げ出した。
「よし、問題解決だ」
満足する正義の味方。
すると一人の男の人が近づいてきた。
「君、なんだかわからないが、あまり大きな声で騒がないようにね、迷惑だから」
正義の味方はなぜ怒られてるのかわからないが、とりあえず。
「はい、味方になれてよかったです」
男の人たちの頭の中は「????」
「んまぁよくわからないが、早く帰りなさい」
「はい、ありがとうございました」
大満足でその場から去りました。
「あの子大丈夫か?」
「知らね」
ヒューと虚しい風が吹いていた。
てくてく
「あ、学校行かなくちゃ」
大学で昼食をとって教室で座ってます。
「ふんふん」
今日は事件を解決(騒いだだけ)してご機嫌である。
「おい知ってたか」
3人の男子学生がコソコソと話しているのが聞こえた。
正義の味方は聞く耳をたてる。
「ヒロシがコクるらしい」
「どこで?」
「あの空いてる実験室だって」
「マジか」
「いつだ?」
「もうすぐだってよ」
「勇者だな」
「ああ、勇者だ」
「見にいこうぜ」
「こっそりとだぞ」
「ああ、分かってる」
正義の味方ははっきり聞いてしまった。
「む、勇者だと、正義だ、味方しないと」
もうやめて欲しいんだけどな。
ーー某実験室
「何か用事でもあるの?」
「お、おれと「フレー、フレー、ヒ、ロ、シ」え…」
そこには、応援団服を着て「頑張れヒロシ」と書かれたでっかい旗を持った正義の味方がいた。
ついに、味方する=応援する=応援団となってしまったみたいだ。
「ガンバレ、ガンバレ、ヒロシ」
「ガンバレ、ガンバレ、ヒロシ」
「ガンバレ、ガンバレ、ヒロシ」
「ガンバレ、ガンバレ、ヒロシ」
物凄い叫び声でその場は騒然となった。
「き、君やめなさい」
職員と警備員に引きずられ職員室でこってり絞られた正義の味方であった。
こんな人いるの?
知らね