ウィークエンド・ナイトメア
鯵のドレスを 鯵の開きを
鯖のフィーレを 鯛の皮引きを
陳列棚には3割り引きの シールを待たれるお客様
日曜朝の定番は まな板の上の鯛のこと
それは鱗を飛び散らし それは頸を叩き割り
頭を抱えて風呂に入る 塩味染みた風呂の中
虚な瞳の金目鯛 昨日を見つめる金の眼は
鯵の骨抜きピンを持つ 恨めしきこの出刃に
映る昨日の輝く笑顔は 金曜を跨ぐ死の眼に
お客様 嗚呼、お客様困ります
その子は素手で触っては 他のお客様がいるのです
鮭はどこ、昆布は何処かと訊かれたら ふりかけコーナーをご覧ください
見切り発車の見切りです ですが道理は通します
ですのでお客様お手元の 三割り引きのお刺身は
半額シールは貼れぬのです
冷凍鮮魚のコーナーに あらこんにちは生⭐︎秋⭐︎刀⭐︎魚
乾燥わかめ置き場には 常温保存のヨー⭐︎グ⭐︎ル⭐︎ト
割烹着投げていいですか? 怒りを柳の一刀に込めて
柵を刻んで イカを刻んで
柳を出刃に持ち替えて
尾鰭を間引いて 塩鮭刻んで
今宵は良い日と祈りながら
明日こそいい日と祈りながら
時計の針が一周するぞ