No.5 記録庫
大切に保管する少女の話
うめき声が、泣き声が、慟哭が、無機質な文字となって私の中を巡っている。
「はい、ちゃんと読んでよ。」
今日もいつもの白い服の男が私の頭を押さえつけて、書類を突きつけた。パラパラと捲られたそれらが目に入る。勝手にぐるぐると眼球が動き始めた。誰かが死んだ、わたしと同じ子どもたち、変化しちゃったわたしたちの記録。
膨大な文字が目から脳へ押し入り、頭の中をぐちゃぐちゃ跳ねた。耳の中で叫び声をあげて、喉を滑り落ち、お腹の中を飛び回ってひっくり返る。落ち着く場所を探そうとわたしの内側で暴れ、元々あったわたしの一部を追い出して居座った。喉の奥が酸っぱい。
「吐かないでよ。面倒だから」
じっとりと滲んだ汗を握り込む。上がってきた胃酸を飲み込めば、じわりと書類が滲んでいる。
「はい、終わり。」
最後のページになって、頬を紙で叩かれる。
今日は28人が死んだ。No.12の影響でで3人が昏睡状態に、No.2に6人の子どもが殺された。実験中に10人が死に、終了後に9人が衰弱死した。死人の数がわたしの中に溜まっていく。彼らの記録に押し潰されて、わたしの記録はなくなっていく。わたしはどうしてここにきたんだっけ。わたしは誰なんだっけ。もうどこを探してもわたしのかけらは残っていない。
指の先まで彼らの苦しみがわたしを作っている。
「No.12の記録を」
白衣の大人がやってくる。とくとくとく。心臓が不自然に跳ねる。血液にのってNo.12の情報ががめぐる。夜が好きなあの子の記録。舌にのって勝手に出てくる。
「実験体No.12。収容方法、単体での収容。推定年齢10〜12程度の少女型。同空間にいる他者をある程度の確率で昏睡状態にすると考えられる。発動条件は不明。現在までに21名が昏睡状態。実験内容、」
流れるようあの子の記録が飛び出して。
「あー、もう。そこはいいよ。融通が効かないなあもう。No.12の今日の記録だけだってば。確認なだけだからさ。」
ペチペチと叩かれて、また新たに口を開く。
No.をもらったもの、もらえなかったもの。
わたしは知っている。もらえなかったものたちを。
わたしは知っている。持つものたちの生き様を。
わたしは記録している。
わたしは蓄積している。
死んでいった子どもたちを。
生きているあの子達を。
わたし以外のみんなの記録を。
読んでいただきありがとうございました。




