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魔獣とのバトル!




 捕虜にした盗賊のオヤブンとともに馬車で進むと、気配探知にひっかかるものがあります。


 そのままロープを引っぱって300メートルくらい先まで連れていきました――この世界の単位は普通にメートルです。元ネタが日本製の乙女ゲームですから! ……それでいいのか? と考えてしまう時代が私にもありました!


 太い木の幹にロープを縛ります。


「おい、俺をどうするつもりなんだ? まさか置き去りか?」


「置き去りになんかにしませんわ」


「こんな人通りのぜんぜんない田舎道に置き去りは勘弁だぜ」


 盗賊のオヤブンはあからさまにホッとした声を出しました。


 こいつらと、私の家の裏切り者たちが、いつ、どこの時点でつながったのか知りませんが、どうやら道で追いかけて包囲する前からのようです。なぜなら、本当に通る予定だった街道からずっと離れたところにいますから。


 正確な位置すらわかりませんが、街道ならもっと整備されているはず。


 路面もそうですけど、魔獣もそうそう出ないはずなんですよ。


 なのに、ここは……




「ぎゃぎゃ」




「ぎっ」




「がががっ」




 謎の言語で会話する3人組がやってきました。


 身長1メートル前後の緑色の肌が特徴的ですが、頭には小さな角が生えていたり、口元には鋭い犬歯のようなものがある、そんな3人組。


 ゴブリンさんたちのパーティーです。この世界の人たちは魔獣と呼んでいますが、いわゆるモンスターが実在するんですよ。


 そのパーティーは運がよくて、おいしそうな獲物を見つけました。




 木にしばられた人間です。




「ぎぎぐっぐっぐっ」




「ががぎ」




「ぎっ、ぎっ」




 きっと「おいしそうだな」とか「脂ののりがイマイチでかたそう」だとか「しっかり煮込めばいいよ」なんて会話しているに違いありません。


「おーい、お嬢さん。どういうことだよ、助けろよ」


 別の声が聞こえてきました。きっと「俺は美味いぞ、赤味の肉をギュッと噛み締めて食べると最高」とか、なんとか言っているに違いありません。


 なにしろ、この世界のゴブリンにとって人間はおいしい食料らしいですから。


 さらに女性だと食べる前にオモチャされることも多く、リアルに「くっ、殺せ!」というような目に遭いますよ。

 

 街の外に出る必需品として自害用の毒が売られていたりしますから。必需品ですよ? 結構な人気商品でみんな買ってます。


 しかも、その毒というのが生命活動が終わっても体内を汚染し続けて、死体を口にした魔獣を殺すという、究極の復讐兵器みたいな性能なのでした。人間を原料にしたホウ酸団子ですよ、ドン引きです。


 ちなみにオモチャにするのは主に女性ですけど、たまに男性のお尻をどうにかすることもあるらしいので、盗賊のオヤブンは大ピンチ!


「せめてロープを切って、剣をくれ」


「え? 新鮮なうちに食べてくれ? ゴブリンにアピール?」


「ぜんぜん違うだろう、似たところ、どこにもないぞ。ふざけてないで、さっさとロープを切れ!」


「俺を食え?」


「ロープを切れ、だ。韻もなにも踏んでないじゃないか! なあ、おい、頼むよ、冗談を言っている場合じゃないんだ!」


 ゴブリンは盗賊のオヤブンにどんどん近寄っていきます。


 そのまま馬車を突っ込ませた場合、ゴブリンが馬を傷つけないか心配で、傷がついても死んでも問題ない盗賊のオヤブンを囮&餌に使う作戦を考えたのですが、なかなか上手くいったみたい。


 脇道みたいなものがあれば囮&餌を捨てて、そっちから進むところですが、残念ながら一本道なのでゴブリンは排除の一択。


 まあ、ゴブリンは前世の日本でいうならキッチンなんかによくいる黒くて、つやつやした、あのいやらしい虫みたいなもの。見かけ次第、殺、殺、殺、なんです!


 前世でも、今世でもGは私の敵!


「旋風の刃!」


 Gを丸めた新聞紙で叩き潰すように、風属性魔法でコブリンを首を跳ね飛ばしてやりました――3頭まとめて。この世界でのゴブリンの位置づけはGクラスですからね。どんどんプチッとやります。


 3頭のゴブリンくらいなら一撃瞬殺ですよ?


 しかし、こういうのも乙女ゲーにはない要素――というか、あったら乙女が泣くぞ。ゴブリンを首チョンパーにシーンとか、とんだトラウマ。


 私はね、割と平気ですよ?


 いまだに完全な記憶がありませんが、3歳のころ、どうやらわたくしには前世というものがあるらしい、とぼんやり認識したのです。


 日本という国で生まれ育った、ゲームが好きで、人付き合いが苦手な女の子の記憶が断片的にあって、どうやって死んだのかは思い出せませんが、最期のあたりは『紅碧双月のストランブール』という乙女ゲームを必死でやっていたようです。


 オタク友達のようなものができたのが嬉しくて、その彼女が好きだった乙女ゲームをやったわけですよ。なんとか共通の話題を作ろうと頑張って。


 本当はRPGみたいなものが好きですけどね、私は。


 だから、私は『紅碧双月のストランブール』について詳しいものの、本当の出身はPRGですからゴブリン退治は作業みたいなものですよ。


 ゴブリンをプチプチ潰してレベルアップ。


 ついでにいうと、この世界に転生してからも作業は結構やりました。


 なにしろ侯爵家は北の守護者と呼ばれてるんですよ、みんなから。ほとんど辺境伯みたいなもので、人跡未踏の峻険ばかりの北の山脈は魔獣の楽園。


 家名ともなっているストレリツィ山脈から下りてくる凶暴な魔獣を討伐するのか主な仕事ということで、一族郎党、精鋭が揃ってるんですよね。


 で、私もやらされました。北の守護者の一族に生まれ、魔法に才能がありましたから、幼いころからスパルタ教育ですよ。


 5歳にしてゴブリンくらいならプチプチ潰して、才能に磨きをかけました――ゲームと違いステータスを見ることができなくて困りましたが、なんといっても私は魔法士として天才的な才能があるらしいですし、前世の知識もありますから、鑑定の魔法を創造して効率よく自分で自分を育成しました!






ブクマ、評価ありがとうございました

応援していただいているようで、とても嬉しいです

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