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視察団のメンバーは?




 やっとアグリファット遺跡までいけることになったのはいいのですが、なんと帝国の視察団としてです。王国の侯爵令嬢がそんなものに入ってしまっていいのか? と思わなくもありませんが、まあ、いまの私は冒険者ですから――一緒にいくリフーノさんからは怪しまれているみたいですけど。


 その原因が私のあふれる教養というのですから、ある意味ではしかたない面がありますね。前世の日本では高等学校にいかない人は少数で、当たり前のように中学の次は高校に進学していましたから、高等学校といいつつ一般教育とか基礎教育に限りなく近い扱いですが、この世界での教育レベルからすれば日本の高校は本当に高等教育。賢者にだって勝てるほどの知識を持っているわけですよ、私は。


 今世でも侯爵令嬢ですから庶民よりはずっと高い教育を受けていますし、底辺職業である冒険者を装っても、どうしても隠しきれない部分があります。


 だけど、偽装しているのですから、もっと慎重になったほうがいいですね。


 いま視察団の顔合わせを兼ねた昼食会です。朝だいたいの時間に帝都を出発して、同じ道を通っていくうちに少しずつ合流していき、目的地であるアグリファット遺跡までの中間地点にある小さな街で最終的に集合。ついでに昼食をとりながら親睦を深めるということのようです。


 ただ、その合流というのも問題がありそうで、私たち以外の視察団のメンバーはものすごい護衛を揃えていました。もちろん、貴族家が出かけるのですから護衛がつかないはずがありませんが、それぞれが少なくとも100騎。しかも腕利きばかりが集まっている様子。


 まるで大名行列みたいな陣容にはびっくりしましたけど、それはともかくとして昼食はまずまずでした。


 以前、アルフレッド・サルマーニュ伯爵からアグリファットにいったことないマグリティア帝国の貴族はいないと聞きましたけど、上流階級の学校で行われる遠足の定番コースらしく、ちょうど休憩にちょうどいい場所にある街にも高級なレストランがあるんですね。


 マーケレス公爵家はリフーノさんが正式な視察団のメンバーで、私は護衛&相談役ということになっていますが、この昼食会に出られることになりました。


 面倒ではあるものの、いちおう顔ぶれを確認できますので、私にもメリットはあります。どうせテーブルの一番隅でみなさんの邪魔にならないようにしていて、静かに話を聞いていればいいだけの簡単なお仕事。


 そんなふうに気軽に考えていた時期が私にもありました!


「噂によるとマーケレス公爵家の騎士団を壊滅させたとか」


「お1人とお手合わせいただいただけです……これなんですの?」


「このあたりで採れる野菜だな。そのようなことより、騎士団との手合わせでは圧倒的な強さだったという噂もあるようだが」


「たまたま運がありました……これなんですの?」


「鶏肉を焼いたものだろう、珍しくもない。珍しい話ならば、お堅いと評判のマーケレス公爵に若い娘の思い人ができたとか」


「そんな下世話な噂は耳を汚すだけですわ……これなんですの?」


「すりおろした野菜のスープだろう。これも下世話な噂話だが隠し子説も」


「わたくしの父は公爵様ほど高貴な方ではございません……これなんですの?」


 なぜか話題の中心が私になっていますが? どうやらマーケレス公爵の護衛と試合をしたことが噂話として流布しているようです――まあ、それはそれとして無双したことになっているのは、ちょっと。


 ましてや愛人説とか、隠し子説とか、まったく意味不明です。どうして愛人や隠し子に遺跡の視察をされるのでしょう?


 王国の貴族も噂話が大好きな生き物ですけど、帝国も同じなのですね。情報収集としては中途半端ですし、悪口の一種なのでしょうか。


 しかも私たちマーケレス公爵家は代理人なのに、伯爵家は当主みずから視察の予定みたい。それも3家とも。侯爵家だけはさすがに代理ですけど、これもこれで大物というか、伯爵より厄介というか。


 どうなってるんでしょうね? 護衛の数があまりにも多いと思ったのですが、貴族家の当主ならばこんなものかもしれませんね。


 ただ、こういうときには困ります。相手が貴族で、こちらが公爵の庇護があるとはいえ平民ということになっていますから、少しでも無礼な態度はとれないんですよ。無視するわけにもいきませんし、まともに答えるのもバカバカしい。


 しかたないので、私も噂話をしましょう。


「もしかしたら、そちらはベメロガ様ではございませんか?」


「ほう……わたしを知っているかな?」


「マグリティア帝国でもっとも魔法の深淵まで潜りし魔法士といわれている方ですので」


 帝室魔法士筆頭ですよ。それがビレーム侯爵が視察団に派遣した形でメンバーにおさまっている不思議。皇帝の直属の魔法士が、皇帝の家臣の部下になるはずありません。


 伯爵家の当主より、さらに問題あり。


 私のことより、そっちのほうがずっと驚くと思うのですが。


「ルイーズ殿とおっしゃったかな、長らく魔法士をやっているだけの、いまは死にかけたジジイだ。気にすることはない」


「この大陸にあまねく名声が轟いていらっしゃるのに?」


「魔法の道は長くて遠い。その最初の一部を少しばかり囓っただけで、もはや寿命が尽きようとしておる。もし、そんなジジイの声に耳を傾ける気のある若者ならば、きっと必死で精進して、もっと先まで進めるであろうよ」


 しゃべっている言葉は謙遜の塊なのに、その態度ときたら! 魔法士らしくローブを着ていますが、それが輝くような金色です。さっきこっそり鑑定したら地竜の革に金箔を貼ったものらしいですけど、見栄装備もいいところ。


 死にかけたジジイと自称しているのに、皺だらけの顔はテラテラと光っていて、内容とは裏腹にこっちを見下しているような口調。努力次第では自分より前へ進めるよ、と言っておいて、本心では自分こそがトップだと自負している、そんな雰囲気。


 まあ、魔法士はだいたいそんな奴ばかりだし、その元締めみたいな立場の年寄りなのだから、わざわざ怒るだけ徒労ですけど。


「もっと先まで進めるよう必死で精進いたします」


 ここは相手の言葉をそのまま返して、おまえより上だぞと煽るだけにしておきましょう。


 いまムッとした顔になりました。素直なジジイですね、こういうときは顔に出したら負けですのに。












 ブックマーク、評価ありがとうございました。


 誤字報告もありがとうございました。いくつも間違えてて恥ずかしい……顔が真っ赤です


 ポイントが上がってて、びっくり!

 公式のランキングには無縁の底辺作者でもポイントがいただけましたらsinoobi.comの期待の日間あたりでなら、そこそこ上のほうにいけるのです!


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