私のターンがはじまるよ!
商隊の護衛契約には途中で『黒十字血盟団』に加入した私の名前はないということで、ナーラックさんに盗賊に売られそうになりました。
すると『黒十字血盟団』のリーダーがかばい口論に。
面倒になったのでしょうね、盗賊のリーダーが文句があるならかかってこいとか言い出しまして。
もちろん、文句があるのでかかっていきましたよ?
突撃です。
盗賊団の中央に向かって猛ダッシュ。
本当は盗賊相手に降伏なんて気に入らなかったのですが、いちおう『黒十字血盟団』のメンバーですからマレックの判断に従っただけ。
しかし、私は護衛として雇われてないのなら自由にやっていいはず。
ということで、蹂躙させていただきます!
「見えざる巨人の手! 風よ、すべてを飛ばせ!」
自分の周囲を無重力にして、本来は敵を吹き飛ばす突風の魔法をうしろに放出。
瞬間的にロケットのような加速で盗賊たちの集団を突き抜け、商隊の反対側に出ました。
そのまま、すたこらと走ります。
「逃がすな!」
やっと我に返った盗賊団のリーダーが顔を真っ赤にして怒鳴りました。手入れもせず伸ばしっぱなしになっていた長髪の、額からてっぺんのあたりがファイヤーボールで焼け焦げ、まるで落ち武者のようになっています。
新しいヘアースタイルが気に入らないようで、ものすごい勢いで追いかけてきました。もちろん、仲間たちもリーダーの指示で一斉に商隊から離れ、遠くに逃げていく私を追ってきます。
これで『黒十字血盟団』のメンバーたちから距離をとることができ、敵がほどよく集まってきました。
「見えざる巨人の足!」
一気に脳内の魔法陣に魔力を強く流し込んで、全力で潰しにかけました。
なにしろ、せっかく距離をとったというのに、お人好しの集団である『黒十字血盟団』のメンバーたちは私を助けようと、こっちに走り出したんですから、あまり時間はかけられません。
盗賊団がだいたい地面にめり込みかけたところで魔法を解除。これ以上続けると『黒十字血盟団』のメンバーが重力操作した範囲に入ってしまいます。
「盗賊の皆様、降伏を勧告いたしますわ。文句があるようでしたら、かかってきてもよろしくてよ?」
「おーい、ルイーズ、やりすぎ。こいつら骨が折れてる」
レアナが槍で盗賊どもをチョイチョイと突っつき呆れた声を出しました。
ちょっと出力の加減を間違えましたかね、私? 倒れている盗賊たちに近づいて確認すると、膝が壊れているか、足首がやられています。どちらも大丈夫な人は早々に転んだらしく、そっちはそっちで肋骨が折れていました。
リレンザだけは倒れている盗賊たちには目もくれず、そのまま私のところまで走ってきました。なにか用かな? と油断していた私にショルダータックルを浴びせてくるので2人まとめて地面にひっくり返ったじゃないですか。
「なんで1人で勝手に逃げようとしたの? なんで1人で戦うの? いまの魔法はなに?」
これは私の魔法の秘密を探ろうと攻撃してきたと判断していいですか? タックルで押し倒したり、上に乗って寝技をかけようとしているようですが、切り札の魔法なのだから教えてあげませんけど。
そもそもリレンザは科学の基礎教養に欠けますから重力がどんなものかもわかってないはずです。だから、習得はたぶん無理。
この章は実質的に今日までです。明日、幕間が入る予定。