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誰かが交戦中です



 マグラナカン峡谷のダンジョンまでやってきました。低層にいる魔獣はそんなたいしたことないので、さっさと掃除して最大速度で進撃していきます。


「光よ、集いて彼方を照らせ」


 私が勝手にサーチライトと呼んでいる魔法になりますが、光で足下や周囲を照らすのではなく、強く集光させて遠くまで照らすことができます。相手に肉体的なダメージを与える攻撃魔法とは違いますが、暗い洞窟のようなところに住んでいる魔獣の目を眩まして戦闘能力を奪う効果があるんですよ。


「切り裂く水の刃!」


 魔獣が顔を背けてサーチライトの光をよけようとしているところに、飛ぶように斬り込んでウォーターカッターでバサバサ狩っていました。


 戦闘というより、ほとんど作業ですけど、こっちは急いでいるのでしかたありませんよね。


 タギるバトルは、そういうことをしている時間のあるときで。


 まあ、下に向かって深いところまでもぐれば別ですけど、横に向かって浅いところを通っていれば強い魔獣に出会う可能性はほとんどないんですよね。


 そうやってどんどん進んでいくと、遠くから人の声が聞こえてきました。怒声とか、悲鳴とか、そんな感じのもの。


 どこかの騎士団か、腕に覚えの冒険者が戦っていて……負けそうになっているのでしょうか?


 颯爽と登場して魔獣を蹴散らしたら、そのあと自己紹介となりますよね、たぶん。命を助けてもらった相手ですから、私のことを忘れるはずありません。これはダンジョンにもぐっていたというアリバイ作りにちょうどよさそう。


 そんなことを考えていたのがいけなかったのか、声がどんどん遠くなっていきます。もしかして壊滅して敗走中でしょうか?


 慌てて追いかけました。


 すぐに倒れている人を発見。


 剣士みたいです。金属の胸当てに、両刃の長い剣。装備から見て騎士ではなく、冒険者でしょうか? 周囲には破れた鞄や、その中身らしい携帯食料などが転がっていました。


「光よ」


 ライトで照らしてみましたが、もはや手遅れ。あちこちに噛み傷がある上に、右手がなくなっていて、もう血が流れていないところからすると心臓が止まっています。念のため確認しましたが、呼吸もしていません。


 傷の状態からして、おそらくファングウルフという大きな牙が特徴の、狼系の魔獣だと思われます。


 その大きな牙での噛みつき攻撃は金属の鎧でも貫通することがあり、さらには何頭も群れるので結構厄介な魔獣ですね。


 早く追いつきたいところですが、群れで行動する魔獣の場合、こっちが接近していることに気づくと、途中に何頭か伏せさせて不意打ちしてくることもありますからね。探知魔法を最大限に使いつつ、できるだけ慎重に進むしかありません。


 すぐにまた倒れている冒険者を発見し、いちおう確認したのですが3人全員が死亡していました。


 さらに進んで2人。


 ファングウルフの死体もあちらこちらに散らばっています。


 冒険者の死体がもう1人。


 次いで5人追加。中には冒険者なのかもしれませんが、どっちかというと荷物持ちらしい死体もありました。


 戦えない人を守りつつ、戦闘能力の高い冒険者がファングウルフの相手をしていたのでしょうが、もう戦線を維持できなくなっている可能性が出てきました。


 3人の噛み跡が残る死体。


 さらに4人。


 かなり大規模なパーティーで遠征しているようですが……はっきりと戦闘音が聞こえてきました。


 同時に「わおーーーーーん!」とファングウルフの遠吠えも。


 こうなっては時間の勝負。


 一気に距離を詰めていくとファングウルフのシルエットが暗い洞窟に浮かび上がってきました。


「光よ、集いて彼方を照らせ」


 こっちの位置がバレないように使用を控えてきたサーチライトを照射。


「切り裂く水の刃!」


 ウォーターカッターを連発して視認できた7頭のファングウルフを攻撃しました。


 本当は重力魔法で一気に殲滅したかったのですが、冒険者と入り乱れて戦っていますから、広域魔法は使えません。


 それでも7頭のファングウルフに対して最低でも手傷を負わせることができたので、この状況では悪くない結果。


「逃げますわよ」


 生き残りは3人。2人の剣士が1人の若い男を守るようにしていました。


「すまん、この人を頼む。すぐに俺たちも追いつくから」


 剣士の1人にそう声をかけられました。


「走れますか?」


「……ああ……走れる」


 2人の剣士に守られていた若い男が頷きました。


 抱えるようにしてダンジョンの奥を目指します。かなり遠くまで届くサーチライトで照らした範囲にはファングウルフはいませんでしたので、遠吠えで呼ばれた仲間がいたとしても、どこかの横穴にいるはず。それがこっちにくる前にできるだけ遠くに逃げてしまえば、いちおうの安全は確保できます。


 頼まれた若い男のペースに合わせつつ走りながら振り返ると、2人の剣士は仲間の荷物をあさっていました。最低限の食料と水がなければ、この場を切り抜けても先はないと思ったのか――金目の物は置いていけないと欲をかいたのか。


 どっちにしても、いまはそういう場面じゃないんですけどね。











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