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次なる目的地へ




 レアット子爵にお父様からの手紙を渡し、ちょっとした情報交換。


 ただし、お互いに立場というものがありますから、話せる内容も自ずと限界があるんですよね。


 というわけで、その先は独り言タイム!


 お喋りしてるんじゃないからね、誰かに聞かせてるわけじゃないからね、なにも漏らしてないからね、という建前で、聞いて欲しいこと、聞きたいことを並べていきます。


 今回の戦争、どうやら突っ走っているのは近衛騎士団とのこと。つまりは帝国皇帝の直属部隊。


 皇帝の手足が戦争の準備をしているのなら、つまりは皇帝自身がそういう方向であると考えるべきでしょうね。


 しかし、そうなると戦力を埋める手立てがほかりません。なにしろ帝国の貴族であるレアット子爵ですら王国と100回戦えば100回負けると断言してしまうのですから。


 ここで気になる地名が出ました。


「アグリファット?」


「この街からだと帝都を越えて1日もかからないところだ」


「どこかで聞いた地名だと感じていましたが、ひょっとして遺跡の街の?」


「そう、そのアグリファットだ」


「500年くらい前の要塞跡があって、いまでも発掘作業が続いているものの、いまだ全貌すらわからないほど大規模だと聞き及んでおります。そうしますと、なにか兵器が出たのでは?」


「伝説として残っているのは千万の魔獣を従えた魔王と戦うために建設されたという程度で、1発で戦況をひっくり返す秘密兵器があったという話は残ってないな」


「わたくしも錆びた剣や槍が出たと聞いたことがあるような、そんな程度です」


「当時の戦法と、いまとは大きく変わらないと思うぞ。遠距離のうちは弓と魔法で攻撃、突っ込んできたら槍を並べる。突破されて乱戦になったら剣。愚直にそれで倒したんだろ」


「子爵は倒した派で?」


「いま魔王がいないということは、そのとき倒したと思ってる」


 帝国に多いですよね、倒した派。


 千万の魔獣を従えた魔王が攻めてきたという伝説は残っていて、各地にそれらしい痕跡のある遺跡が発見されています。その中でアグリファット要塞が最大のものですが、結果的に魔王がどうなったかは確たる情報がないのです。


 アグリファット要塞で最終決戦がおこなわれ、結果として魔王を倒したと主張する人たちは結構いて、特に帝国に多い。ここ以上の規模の軍事施設が見つかってないという事情もありますが、やはり自分たち帝国の先祖が魔王を倒したことにしたいのでしょう。


 まあ、魔王というからには寿命だって長そうですし、いま現在はいないということは、そのときにでも死んだということで私も矛盾はないと思いますけどね。


 まさかアグリファット要塞が陥落した直後に突然どこからか勇者が出現して魔王を討伐した、などという都合のいいことが起きたはずもないでしょうし。


 まあ、なんにしても次の目的地は決まりました。


 もちろんアグリファットです。


 当初の予定では夏休みにヌーベルトまで避暑にやってきて、だらだらとアパラセア・ホテル&リゾーツに1月ほど滞在する――ことにして、こっそり帝都にいき、何人かの和平派の貴族にお父様からの手紙を渡しつつ、情報交換みたいな流れを考えておりましたが、開戦の方向に大きく傾いている「なにか」の正体を見極めないと交渉もなにもありません。


 独り言はこれまでとしてレアット子爵のところを辞しました。


 ホテルに戻ると、受付でダンジョンに潜るのでしばらく戻らないけど、部屋はそのままにして、馬車も預かっておいて欲しいと頼みました。


 お金はかかりますが、ヌーベルトにいますというアリバイですね。


「問題ございませんが、ただ、お手紙をいくつかお預かりいたしております。ご挨拶したいということのようですが」


「マグラナカン峡谷のダンジョン、その深部でお茶会をいたします、と伝えてください」


 この街の周辺にあるダンジョンでは最難関です。観光用の整備された山や森と違って、マグラナカン峡谷は魔獣の間引きがされてない――断崖絶壁に囲まれていて、そもそも侵入自体が難しいのです。


 そして、そこに広大な地下迷宮があって、まだ誰も全貌を見た者はいないとされていました。魔獣の脅威だけでなく、峡谷という地形上、どうしても地下は水が流れやすく、水没した通路を通らないと先に進めなかったり、いきなり天井が抜けて水が流れ込んだりと、人の立ち入りを激しく拒むダンジョンとして名を轟かせているんですよ。


 その深部で会いましょう――招待状を送っても誰もお茶会にきてくれないですよね、


 まあ、私に挨拶したいという人たちへの対応は無事に帰ってこられたらにしましょう。


 ユノとの護衛契約も終了。


「なんならダンジョンにもつきあうぞ」


「ちなみにマグラナカン峡谷にいったことは?」


「ないな」


「それならやめておきましょう」


 ダンジョンどころか、その途中までもいったことない者を連れていっても、たぶん、邪魔。


「だが――」


「誰しも役割がございます。わたくしにはわたくしの役割、果たすべき使命。そして、ユノにはユノの役割、果たすべき使命。戻ってきたら食事でもしましょうか? ああ、そうね、そういえばホテルの部屋を借りっぱなしにしておくので、よかったら使って頂戴な」


「いやあ、俺がこんな立派なホテルはもったいない」


「無人でも、ユノがいても料金はかわりませんわ。盗まれるようなものはありませんが、なにかあると勘違いして泥棒に荒らされたら面倒ですし」


「泥棒避けか。それならいい。泊まれる日は泊まっておく」


 ユノが約束してくれたので、ホテル側にも私が不在中でも護衛が見まわりをかねて泊まることがあると伝えておきました。


 そして最後に。


 貴族の紋章入りの指輪はマジックバッグに放り込みました。


 これからはEランク冒険者ルイーズです。












あけましておめでとうございます!

 

まあ、昨日も更新してるんですけどね。

 

一昨日更新分に「今年最後になります」とか「今年はありがとうございました」とか「来年もよろしく」的なことを書き忘れ、昨日も「今年もよろしく!」などと書くつもりが、すっかり忘れてて……大晦日や正月といっても特別なことするわけでもなく、結局 は読むか書くかですからねぇ。

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