「ヴァンパイアの住む古城探索漫才」慶太(けいた)・令太(れいた)
今回はヴァンパイアの城へ行く短編です。
慶太・令太「「どーもー」」
二人はそう挨拶しながら、ヴァンパイアが出るという古城に真正面から乗り込んだ。
現令太のはがいごつ兵、スケルトンだ。
「出ました。スケルトンですなー」
「ほんとや、透けてて骨までばっちり見えるな」
慶太がさっそくボケると、
「『透けとるん』ちゃうわ。スケルトンや!」
と令太がツッこみを入れる。
バシッ!ばきゃっ!
演壇では令太が慶太にツッこむところだが、縦チョップでスケルトンにツッこんで、その頭蓋骨をあっさり破壊する。
「いや~もろいでんな。カルシウム不足とちゃいまっか?牛乳飲まなあかんで」
「そうそう、牛乳飲んで下からだらーっと、スケルトンやから飲んでもこぼれるやないかいっ!」
バシイッ!!
どどーん!!
令太のノリツッこみは範囲攻撃になっており、3体のスケルトンを一気に吹き飛ばす。
「さて、門番いなくなったことですし、入りまっせ」
「ほやな」
二人はスーツという冒険者にあるまじき服装のまま、古城に入っていく。
通路にはリビングアーマーが徘徊しており、行く手を阻む。
こいつは防御力が高くて、そう簡単に破壊は出来ないだろう。
「あれ何やろ?」
「おそらく『お茶の間の真珠獲り』やないかと」
「なんやそれ?」
「リビング・海女や」
「ほう、水のないところに海女さんいるのか」
ネタが長くなると相手の攻撃を巧みにかわしながらになる。
しかし、この二人の攻撃をかわすテクニックはAランク冒険者を凌駕するという。
「海なら真珠を獲るんやけどな」
「ふんふん」
「リビングでは『バールのようなもの』を獲るんや」
「そんなんリビングにあるのは犯罪者だけやないかい!っていうか、そもそもリビングの海女さんじゃなくて、リビングアーマーやろっ!!」
ズガガーン!!!
長くボケをひっぱると「溜め効果」で威力が増す。
令太の逆水平チョップはリビングアーマーの厚い装甲を一撃で砕いた。
「ほー、さすがやな」
「ただ、こいつらのネタじゃないと、クリティカルせんのが難点やけどな」
そう、彼らの持つチートスキル「ツッこみ」はどんな相手にでも効力を発揮するものの、目標となる相手をネタにしていないとクリティカルせず、一撃で仕留めるのは難しいのだ。
「クリティカル無しでもいいくらい腕力鍛えないとあかんな」
「何言うてんねん、結構きたえとるやろ。令太の腹がシックスセンスになったって」
と慶太が、敵がいない移動中にもボケる。
「第六感かいっ!シックスパックや!」
令太が慶太に鋭いツッこみを入れると、やら令太慶太ではなく、ツッこんだ令太の体が光る。
これが「前フリチャージ」である。
次の敵が出た時に対する攻撃力が上がるだけでなく、今のネタと内容が連動すると、格段に攻撃力がアップする。
さらに今は無傷だから無意味だが、慶太の治癒をする働きもある。
そうして二階に上がると、今度は狼男が出現した。
「うわ、出た!犬や!」
「ちゃうわ、狼男や!」
令太は軽いツッこみで狼男の振り下ろした爪を弾き返す。
「知っとる、こいつワーウルフルズっていうんやろ?」
「ワーウルフや!異世界で通用せんネタはあかん!」
なぜかバールの様な物は異世界にあるそうだが、有名ミュージシャンはいない。
よってツッこんでもたいした攻撃力はない。
「ガオーッ!!」
狼男は咆哮を上げると、さっきからかわして攻撃してこない慶太に飛び掛かった。
「ひゃー!かま令太!狂犬病になるー!ワクチンプリーズ!」
かま令太慶太はボケをかます。
相手の攻撃に対してボケている間は、大ダメージを受けることは無いのだ。
「狼男って狂犬病関係あったかな?とりあえず、病気を治すポーションだ!」
令太が慶太にポーションの瓶を手渡すと、慶太はその瓶のふたを開けようとして
「うーん!うーん!固い!」
「開けれんのか、そのくらい!」
「どんなに引っ張っても蓋が取れん!」
「それは回すんやっ!!」
ツッこみを受けてからポーションを飲む慶太。
こうすることで、ポーションの効き目もアップする。
「がうっ!」
狼男は短く吠えると素早い動きでほんろうし始めた。
「いかん、この速さ!捉えきれんぞ!」
「令太、今こそお前の心眼を見せる時!」
「俺の心眼?!」
「そや、シックスパックや」
「今度はシックスセンスであっとるわ!」
『コンボ発生』
先程の前フリチャージの複線回収ができたため、電光石火のツッこみが高速移動する狼男を捉え、壁に激突させて沈黙させる。
「さすが令太のセンスパックやな」
「シックスはどこいったんや」
小ネタでチャージしつつ、最上階へと上がる。
「着いたで。最上階」
「うわ、見ろ!」
目の前に蝙蝠が集まり、人の姿になっていく。
現令太のは最悪とも言われる不死の王。
「ヴァンパイアドーロ工事!」
「そうそう、馬車が良く通るから夜しか工事できへんけどなって、道路ちゃう、ロードやっ!」
パシッ!
ヴァンパイアロードが出現と同時に使った魅了は令太のツッこみであっさり打ち消させる。
「なんだ貴様らは?道化か?」
そう言うとヴァンパイアロードは美しい女性だった。だったが・・・。
「ちっ」
舌打ちをする慶太。
「どうしたんや?」
「いや、ヴァンパイアやろ?普通は倒して仲良うなって、血吸われてみたいと思わへんか?」
「ま、ファンタジーあるあるやな」
「でな、」
「何をごちゃごちゃ言っておる!」
そういうとヴァンパイアロードは空中にたくさんの氷の槍を浮かべ始めた。
「俺的にはロリババアか巨乳姉さんが理想なわけよ。でも、大人の姿なのに、胸薄いやろ」
「何言うてんねん・・・ほんまや」
「なんだとおお!!」
怒りで放た令太氷の槍は二人に命中して吹き飛ばしたが、二人はまったくの無傷。
「な、なぜ傷一つない?!」
こちらがボケて相手がツッこんできた場合、吹き飛ばされることはあってもダメージはゼロ。
しかもダメージが回復することもある。
これも彼らの持つチートスキル「敵からのツッコミは芸人的においしい」である。
「さて、そろそろ倒しまっか。慶太、武器だしてくれ」
「おう」
「そや、必殺のハリセンでな」
唯一認めら令太武器。それがハリセン。
普段使っているのは剣に匹敵する大きさで鋼鉄製。
しかし、令太に渡さ令太のはただの扇子だった。
「そうそうこれでちょいちょいと、ってハリセンやなくて扇子やないか!」
「あと五つあるで」
「なんでそんなにあるねん」
「六個入りの安売りパックや」
「まさかこれが・・・」
「そや、シックスセンスパックや」
『コンボ発生』
「ええかげんにせい、もうええわ!」
そう言うと、令太は六つの扇子をダーツのように次々と投げつ慶太。
「ふん、こんなものくらっても何のダメージも・・・ぐわああっ」
淑女らしからぬ声を上げ、吹き飛ばされるヴァンパイアロード。
不死に効く武器でもないはずなのに、大ダメージを受け、回復すらできない。
最後のオチは絶対的な威力を秘めているのだ。
「「ありがとうございました~~」」
「さて、ふんじばって帰るか」
ヴァンパイアをせっせと縄でしばる令太。
「ヴァンパイア退治しろって依頼で、連れて帰ってええんやろか?」
「この子がギルドでどう扱われるか気になるところやな」
「この子って、ヴァンパイアやぞ。見たままの年齢ちゃうで」
「ほな、100歳とかか?」
「70億歳とかな」
「地球の年齢超えとるがな」
「ここは異世界やから、この星100億年くらいたっとるかもしれんで」
「それにしても行き過ぎや」
「じゃあ、7歳とか」
「極端やな。それはないやろ」
「でも、この胸を見てみい」
「ぺったんやな」
「やろ」
「でも身長は160くらいあるやないか」
「じゃあ、17歳やろか」
「なんでそんな『7』にこだわるんや?」
「パラメータみたら『7』って文字だけ読めたんや」
「気絶中は抵抗落ちるで鑑定効くんやったな。よし、見てみよ」
令太がヴァンパイアに鑑定を使うと、
名前 ナナ・ウェルムストロング
種族 レッサーヴァンパイア
年齢 19
スキル 変化。魅了。闇魔法。
「19歳やないかい!!どこが7…って名前かいっ!」
「ほんまや」
「しかし19やとうちらとそうかわらんな」
彼らはおっさんくさいが、一応23歳である。
「連れ帰ったら、見世物にされるかもしれんな」
まだ被害が出ていないが、ヴァンパイアは凶悪なので退治してほしいという依頼だった。
人を殺していないなら、殺されないかもしれない。
「いや、お店で働かされるやろ」
「なんでや?そんな更正システムあるんか?」
「そや、客寄せパンダになってもらうんや」
「いや、客は怖がって来やんやろ」
「パラメータ良く見てみい」
「そういや、魅了のスキルがあったな」
「令太、お前どこに目えつけとるんや」
「なんや?変化か?あれはコウモリとか霧にしかなれんで」
「レッサーって書いてあるやないか。動物園におったやろ」
「レッサーパンダとちゃうわっ!」
「客寄せヴァンパイアやったか」
「だからヴァンパイアは客寄せへんわ!」
「なあ、もうこの論争やめへんか?」
「なんでや?」
「きりがないわ」
「なら、やめるわ。って、ヴァンパイアおらへん!」
「だからキリになってなくなったわ」
「そっちの霧かよ!おらんくなったって探さな!」
「もうええわ」
「よくないわ!探せー!」
結局ヴァンパイアを見つけられずにすごすごと帰って行った慶太と令太であった。
ストーリーが固まらない内は短編あつかいで投稿します。