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プロローグ
出会いは単純であった。
普通の道の曲がり角にできた死角。
そこを曲がると先ほどから涼しく吹いていた風と共に腹部への軽い衝撃が走る。
「っ…」
「きゃっ」
急いでいたわけではなかったのだが。
そういえば、最近この曲がり角付近では普通車や自転車の事故が多いらしい。
いま自分がぶつかったのが車や自転車ではなく人でよかった。
そんな自己満足な解釈をしていたが、ふと下を見ると尻餅をついた少女──フードを被っていて顔からの性別判断は出来ていない──がいた。
普通ならばここで手を差し伸べるべきであろうか。
ほんの1秒単位の悩みであったがここは普通の人間らしい行動をとることにする。
「…すいません」
手を差し伸べるとその一言と同時に冷えた手に肌の温かい温度が感じられた。
そのまま少女を引き上げて一度会釈をした後に自分とは反対の方角に走っていく。
そんな姿に気を取られていながらも自らの目的を思い出し、自分も歩き出す。
「こんな日もあるだろうな。」
冬の寒さに肌を刺されながら曇った空を睨みつけたのだった。