竹馬の花火
「なあ、女の子誘って花火行きてえな」
「そりゃ同感だけど、女の子誘う度胸あんのかよ」
「無論ない」
「俺にもねえぞ」
「…」
「…」
「そこでだな」
「?」
「俺がお前の好きな2組の康子に声掛けるからお前は俺の好きな紗枝誘ってくれよ」
「それじゃ逆じゃん」
「だから誘えるんだろうが」
「?」
「お前自分で康子誘えるか?」
「いや恥ずかしくて無理」
「なら俺の好きな紗枝に声掛けるのは?」
「まあそれなら気負わずに声掛けられるかも」
「俺も同じわけだな」
「…」
「」
「良し乗った」
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「花火大会に誘うのか?」
「クラスメートも一杯居るだろう花火大会に女の子連れて行く度胸あるか?」
「聞くまでも無かろう」
「河原へ連れて行こうかと思ってる」
「おお!」
「フフフ」
「お前度胸あるな」
「大会に連れてく度胸は無いがな…」
「それはやむをえまい」
「花火はコンビニで調達する」
「いきなりしょぼくなってきたな」
「中学生に何を望んでいる」
「ごもっともで」
「差し当って貯金箱の確認に帰ろう」
「戦果の報告は明日マルハチマルマルに」
「健闘を祈る」
「祈られてもなあ」
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「花火の準備は?」
「抜かりはない」
「しかしよくオーケーしたよな彼女達」
「やっぱり自分の好きな子じゃないから逆に誘いやすかった」
「俺もいつになくぐいぐい押せた」
「この調子で自分の好きな子に告れたらなあ」
「それは言わない約束」
「ところで家族にはもう」
「友達と花火に行くとだけ」
「お互いチキンよのう」
「馴染の俺ら二人だけで行くと思って安心してると思われ」
「それはそれでどうかとも思うが」
「でもよう」
「?」
「彼女達家族に当日の件なんて話してんだろう」
「!」
「俺らの名前も出してるのかなあ」
「!!」
「怖いから考えるの辞めとこう」
「異議なし」
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「どどどーすんだよおい、浴衣だぞ」
「見りゃわかるわ、おお落ち着け」
「ゆゆ浴衣ってさ独りじゃ着れないんじゃね?」
「恐らくだが母親が着つけてくれたかと思われ」
「家族公認で来てるだとうッ」
「そりゃ俺らと違って女の子だもんな」
「てことはさ、やっぱり俺らの事も」
「深呼吸しよう」
「お、おお」
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「こんなとこで待ってたのかよ」
「どうよちゃんと紗枝家まで送って来たか?」
「電柱の蔭から見てたくせに」
「ばれてたか」
「でもありがとな、お前が康子送ってくからて二人きりにしてくれて」
「お前が交換デート企画してくれたおかげで俺も康子とおしゃべりできたよ」
「…」
「…」
「さっきまでこの橋の下で花火してたんだな…」
「来年はみんなどこで誰と花火みてるんだろな」
花火の名残をまぶしたような夜空を見上げながら俺たちは家路についた。