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第三章:夢で逢えたら 11話

彼女はとても懐かしそうに話す。

本当に家族が好きなんだというのがよくわかる。

自分とはあまりに違う家族への想いがなんとなく不思議で、楽しそうに話す彼女が羨ましくも思えた。



彼女の父は変な冗談を言うのが好きで、よくからかわれていたんだと彼女は言った。スポーツを見るのが好きで、テレビと会話していることもままあったんだとか。けれど怒る時はとても怖く、彼女も小さい時は拳骨を頭にもらったらしい。

母親の方はというと、優しいがどこか抜けててちょっと危なっかしい人、と一言で彼女はまとめてしまった。

彼女はたくさんの思い出を一つ一つ確認するように話し、楽しかった過去に想いを馳せた。


毎年家族でキャンプに行くようなそれなりに仲の良い家族。どこにでもあるようなごく普通の家族であり、きっとこれからもそうなんだと何の疑いもなく彼女は思っていた。


――しかしそんな家族の間に亀裂が走る。


それは家族にとってはあまりに唐突で、どうすればいいのかわからなかった。ただじわじわと悲しみと虚しさが押し寄せてくるのを感じていた。

家族は家族に気を遣い、戸惑い、打ちひしがれ、どんどん修復がきかなくなっていく。

彼女は家にいるのも苦しくなった。


どうして家族にこんな風に接しなければならないのか。

どうしてこんな思いをしなくてはいけないのか。

私たちが何をしたというのか。

どうして壊れてしまったのか、原因は?


誰にも聞くことはできない。全部自分の胸の中に押し込め、蓋をする。何事もないかのように振る舞い、偽った。

一人暮らしを始めても家族の問題はつづく。いつ終わりが来るのかもわからない。自分ではどうすればいいのかわからない。それ以前に、自分一人でやれる自信もない。

誰か、誰か、誰か、


――誰か、助けて。


怖い。辛い。どうすればいいのかわからない。お願い、そばにいるだけでもいいから。


――助けて。


やり場のない想い。それはやはり誰にも言えなかった。ずっと、言ってはいけないような、そんな気がしていたんだと彼女は話した。



「それがまさか、会って数日の人に話しちゃうなんて・・・。でもなんか、言っても良いような気がしたんですよね。いつもはダメだって思うのに・・・本当に、不思議」


「それ、わかる。何なんだろうね、ここって」



白い世界に大きな桜の木が一本とベンチが一台。

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