第三章:夢で逢えたら 10話
なのに、偉そうに何言ってんだよ俺。
・・・なんて、バカなんだろう──
白い世界はどこか淋しく、どこか温かく見える。何もなく殺風景だけど、とても落ち着く。
世界のすべてが真っ白に、全部なくなってしまったらこうなるのだろうか?
全部消えればいいのに。
昔、そう願ったことがある。何もかもを捨ててしまいたいと、強く思ったことがある。自分はとても小さく、壁はとてつもなく大きいように見えた。
そしてある日、どうしてわざわざこの壁を越えなければいけないのか、わからなくなった。越える必要なんてない。世界は広く、道は他にもあるのだと、壁から目をそらして去った。
彼女はいつもとなんら変わりはなかった。挨拶をしてから隣に座る。
一つ息をついて口を開く。
「昨日はごめん」
「え?」
「なんか無責任なこと言ったなって。ほら俺も家族のこととか全然ダメなのに、わかったようなこと言って──でも、昨日言ったことは正直に思ったことだから。今思うと考えが甘いというか、ちょっと考えなしだったけど、でもあながち間違ってないんじゃないかって思う・・・」
真面目に言ったつもりなのに、くすくすと彼女は笑った。
「私、頑張ってみようと思うんです。最初はダメでも、何度もアタックしてみれば変わるかもしれない。やってみる価値はある。確かにもっと考えなくちゃいけないことですけど、でも昨日の言われたことでやっと向き合おうって思えたんです。だから、謝らないで下さい。・・・それに、私もあながち間違ってなかったと思いますよ」
昨日の張り詰めたような表情とは全く違う、素敵な笑顔だった。
「ただ、どうすればいいのかが全然わからないんです」
「俺も考えてみたけど、ダメだった」
「まあ、家族に今更なんてないらしいですから、ゆっくり考えても大丈夫ですよね?」
「・・・それ言われるとちょっとキツイ」
「そうですか?」
そう言ってまた彼女はくすくすと笑う。
いつものように会話が弾む。
彼女のお姉さんのことを二人で考え、話しあった。他にもくだらない話もしたし、彼女は前よりもっとたくさんのことを話してくれた。お姉さんのことがあって話すのを控えていたのだろう。話は、家族のことが多かった。