第三章:夢で逢えたら 6話
「わからないんです、話さないから。でも多分・・・イジメ」
「イジメ?」
「多分としか言いようがないんですけどね」
まあそうだろう。こっちが知りたくても、本人が話してくれないんじゃ知れない。
わかって、あげられない。
「姉は頭が良かったから、一人で他県の高校に行ったんです。むこうの寮に入って、家族とも友達とも別れて・・・たったひとりで」
彼女はうつむいて、握りこぶしを作った。
「姉はもともと無口だし、とってもとっても強がりで負けず嫌いだったから、夏休みに帰って来た時も私たちになにも言わなかった。だから、気付いてあげられなかった。きっと、きっといっぱい抱え込んでいたのに」
「・・・うん」
「すごく優しくて、面倒見の良いお姉ちゃんで、頼れるお姉ちゃんで、自慢のお姉ちゃんだった。そんなお姉ちゃんが好きだった」
「うん」
「夏休みが終わって学校に戻った次の日、お姉ちゃんは教室で倒れた。その知らせを聞いてすぐにみんなでむこうの病院に行って、そしたら、そしたらもうお姉ちゃんは話さなくなってた。病院の先生はストレスが原因だろうって。入院してる間、お姉ちゃんの学校の人たちは先生以外誰も見舞いには来なかった」
「うん」
彼女が話してくれるなら、黙って最後まで聞こうと決めていた。けど、彼女が自分に言い聞かせているような言葉に、何か相槌をうたなければ彼女が話を止めてしまいそうな気がして、何度も何度も相槌を打つ。
「高校を退学して、家に戻ってからもずっと何も話そうとはしなかった。どこかに行くでもなく、ただ家に籠って一日一日を過ごして。でも時々知らないうちに何か物を壊してたり、部屋で倒れてたりしてる時もあって・・・」
一度言葉を切って、絞り出したように震えた声で彼女は言った。
「・・・わからなくなるんです。全部。お姉ちゃんが悪いわけじゃない。家族のせいでもない。誰のせいかもわからない。誰のせいにもすることができない。お姉ちゃんの人生が、こんなにも変わってしまったのに。それに両親は自分のせいだって自分を責めて。私もなんだか自分のせいのように思えてきて、でもどうしようもなくて、本当に、わからなくなるの」
「うん」
家族が自分の知らないうちに傷ついて、ボロボロになってしまうというのは、どんな気持ちなんだろう。




