第二章:夢の中 14話
仕事は、今日明日までは前と同じ量ということになっている。
でも、いつもより苦痛に感じない。
それは多分、少しだけれど何かが変わるからだろう。
思いの外、仕事のペースがいつもより速い。
仕事に集中できる。
「おい橘、もうそろそろ行かないか」
時間も気にせず、仕事に没頭していた。
だから進藤にそう言われても、一瞬何の事だか分らなかった。
「え?」
「昼飯、行くって言っただろ?」
事務所の壁に掛かっている時計を見ると、今の時刻は12時40分だった。
もうすぐ1時か、そう思うと急に少しお腹が減ってきた。
「すぐそこのうどん屋でいいだろ」
「勝手に決めないで下さいよ」
「もう決まったことだ。ほら、行くぞ」
進藤はそう言ってさっさと行ってしまった。
その後を急いで追う。
俺がこの事務所に入ったばかりの頃も、進藤と食事を何度かした事がある。その時もそのうどん屋だった。
でもここ一年くらいは一緒に食事なんてしていない。
そこのうどん屋も久しぶりだった。
そのうどん屋は、事務所を出た通りのつきあたりを曲がってすぐの所にある。
こじんまりとしていて、でもだからこそなんだか落ち着く、そんなうどん屋。
うどん屋の中に入ると、なんだかむっとした暖かい空気が漂ってきた。
中を見渡すと、客は5人位しかいなかった。
「一番奥行くか」
進藤が一番奥のテーブルを指さして聞いてくる。
「別にいいですよ、どこでも」
一番奥のテーブルに着く。
「おばちゃん、丸天一つと・・・」
進藤が眼でお前は?と聞いてくる。
「俺はきつねで」
「はいはい」
メニューは見なくてもいい。
前から、なぜかここではいつも進藤は丸天うどんで、俺はきつねうどんと決まっていた。
何があったからとか、理由があるわけではない。
ただ、なんとなく。いつの間にかそう決まっていた。




