第二章:夢の中 10話
「なんか、ここって本当に何もないですよね」
「確かに、風とベンチと桜の木しかないね」
「でもなんか満ち足りてる。空も鳥も虫もいないのに。ここはこのままで十分って感じ」
「なんとなくわかる気がする。いろんなものがごった返してなくて、すっきりしてて何も考えなくていい。何もないのが一番楽で一番良い」
「いいかげんなくらいが丁度いいですよね」
「俺ももっといいかげんにやってればもっと生きやすかったのかも」
「え?」
「頭ではわかってるんだけど、何故か完璧にしなくちゃって思っちゃうんだ。完璧にできるはずないのに、無理して頑張って自分追い詰めて、で結局ものすごく疲れる」
いつもそう。
他人の目を気にしてか、昔親が「完璧に」って言いつけてたのが体に染み込んでいるのか。
今となっては原因もわからない。
いつも完璧にしようとして、全然余裕なくて。
誰が悪いとか誰かのせいとかじゃなくて、結局は自分がダメなんだ。
それを親のせいにしてたのかもしれない。
本当、ガキだ。
「私もありましたよ。そういうの」
「本当に?」
「はい。姉が小さい頃から何でもできるタイプの人で、親のそんな姉が誇りで、それがとても羨ましかった。一時期勉強とか頑張ってみたけど、全然ダメで。なんか自分が惨めに思えて、辛かったです」
「あ、でもあの時頑張ってみて良かったなって思いますよ。自分の限界とか足らなさとか知れましたし。あと、姉は泳げなかったんですよ」
「泳げなかった?」
だから何なんだろう。
「はい。だからプールの授業の時も毎回見学してたんですよ。それに料理も全然できなくて」
「・・・それで?」
「やっぱり、人には向き不向きがあるんだなって。足りないところはどこか別のところに蓄積されてて、逆に人より秀でてるものはどこかでその分欠けてるんですよ。自分では、人より良いところって見えにくいですけどね」
自分の人より秀でてるところなんて、ない。
欠けてる所ならすぐ見つかるのに。
「俺にも、人よりいいところなんてあるのかな」
「ありますよ。もちろん」
「・・・例えば?」
普通、自分の良い所を人に聞くなんて気が引けるけど、でもものすごく気になる。




