第二章:夢の中 9話
でも彼女は俺の知らない本のタイトルまで言ったわけだし・・・
どうなんだろう?
部屋についてからもそのことをずっと考えていた。
「夢には不思議な力がある」って、テレビでなんかの偉い人が言っていたのを見たことがある。
ワールドトレードセンターの同時多発テロの事だって、それが起こる前にその映像を夢で見たって言う人がいっぱいいたらしいし。
それに寝る前に思い浮かべたことが夢になるとか、会いたいと思っている人が夢に出てくるって言うのも聞いたことがある。
わけがわからない。
今まで別に夢のことを疑問に思わなかったけど、考えてみれば謎だらけだ。
だいたい、“夢”って何なんだ。
赤ちゃんの時は夢でいろんなことを学習しているらしいけど、大人になっても夢なんて普通に見る。
第一全然学習とはかけ離れている夢を見ることがほとんどだ。
どうして人は夢を見るのだろう。
神様は何故、人に夢を見る機能を付けたんだろう。
同時多発テロの時みたいに、何かを伝えるためなんだろうか。
わからない。
考えるのはもうやめよう。
せっかくの有休なんだから。
彼女が存在してなくても、会えればそれでいいかもしれない。
今日は、会えるだろうか。
電気を消して、布団にもぐりこむ。
目覚まし時計はセットしない。
できるだけ向こうにいたい。
ゆっくりと目を閉じ、体が沈むのを感じる。
そして、俺は再び落ちた。
目を開けると、そこに広がるのは真っ白な世界。
また、どこかへ向かってただ真っ直ぐ歩く。
気付けばまたそのベンチはあった。
彼女はいない。
まだ来ていないのか。
それとも、今日は来ないのか。
ベンチに腰掛け、目を閉じる。彼女がそうしていたように、俺もそうして彼女を待った。
この前は気付かなかったけど、少し風が吹いている。
気持ちがいいくらいのとても弱い風。
なんとなく、心が落ち着くのがわかる。
「こんばんは」
昨日ひたすら話し続けたので、もう聞き慣れてしまった声。
目を開けてみると、やっぱり彼女が立っていた。
「こんばんは」
「隣、いいですか?」
「どうぞ」
彼女が静かに隣に座る。