第二章:夢の中 4話
彼女は俺と違って純粋に夢を抱いていて、それを叶えようと頑張っている。
また、それゆえの不安も抱えている。
俺は、俺は弁護士になりたかった。でもそれは“夢”と呼べるほどきれいなものじゃない。
両親を見返すために。
俺が一緒に弁護士を目指して勉強していた奴等は皆、もっと純粋に弁護士を目指していた。
弁護士になって何をしたいかハッキリしていて、照れくさそうに、でも自信たっぷりに話していた。
初めから、そんな奴等と同じ道を歩めるはずがなかったんだ。
もし、国家試験をパスして研修受けて弁護士になったところで、その先はどうするんだ?って話だ。
弁護士なってどうなりたいのか、何にも考えてなかった。
ただ両親を見返したかっただけの俺。
俺も、期待と不安を抱えながらも夢を追ってみたかった。
あんな風に目を輝かせて夢を語ってみたかった。
「俺・・・はさ、弁護士になりたかったんだ」
なんとなく、彼女ならわかってくれると思った。
きっと全部聞いてくれる。
笑わないで聞いてくれる。
・・・全部、わかってくれる。
俺の中に抱えていた全部を。
親にさえ言えなかった気持を。
誰にも言えなかったこんな馬鹿な俺の話を。
まだ会ったばかりなのに、そんな確信が俺の中にはあった。
正直、自分でも驚いた。今まで誰にも言わなかったし、言いたいとも思わなかったことなのに。
今、ペラペラと全部話してしまっているんだから。
もしかしたら、ここが夢の中だったからなのかもしれない。
現実じゃない世界だからこそ。
夢の中では、この重荷を下ろしてしまいたかったのかもしれない。
ずっと一人で抱えてきた、この重荷を。