第二章:夢の中 2話
辺りを見回すが、やはり真っ白な空間が広がっている。
何もない世界にポツンとあるそのベンチと大きな桜の木は、とても違和感があった。
真っ白の画用紙に黒いインクのシミがポツンとあるような、そんな違和感。
ベンチに近寄ってみると、ベンチに座っている女性は目を瞑っていた。
寝ているんだろうか?
彼女も俺と同じようにパジャマを着ている。
近づいてみて気付いたけれど、このベンチはちょっと変わっていてひじ掛けのところが広く、少し小さい机みたいになっていた。
このベンチ・・・知ってる。
どこのベンチだったっけ・・・?
「・・・」
「・・・そうだ!久米公園だ!」
「へ!?」
「え!?」
ベンチに座っていた女性が、なんとも間抜けな声をあげて勢いよく立ちあがったので、俺もびっくりしてしまった。
「あ、すいません。寝ていたところを邪魔しちゃって」
「え、い、いえ、別に寝ていたわけじゃないんです。ただ、目を瞑っていろいろ考え事してて、その、まさか誰か来るなんて思ってもみなかったんで・・・その・・・」
そう言いながら彼女は、ブンブン手を横に振ってどんどん頬を赤らめていく。
「あ・・・あの?」
その姿があまりに可愛くて、おかしくて笑い出しそうになるのを堪えていたのだが、顔と肩が我慢できずにに笑ってしまっていた。
「ごめん。なんかおかしくて。」
そう言いながらまだ肩が笑っている。
「え・・・」
「それよりさ、ここって夢の中なの?」
今まで見てきた夢の中で、こんな質問をしたのはこれが初めてだ。
「多分、そうだと思いますけど・・・」
彼女も俺と同じようにここへ来たのだろうか。