第二章:夢の中 1話
「ん・・・」
目を開くと目の前は真っ白になっていた。
起き上がってみて辺りを見回しても何もないただ真っ白な世界。
自分の体を見てみると、服はジャージのズボンに灰色のトレーナー。
寝る前に着ていたパジャマだ。
ここは、夢の中だろうか?
今まで何回もいろんな夢を見てきたけれど、こんな本当に何もない真っ白な所なんて、出てきたことはない。
いつも必ずどこか、学校だとか自分の部屋だとか、あと知らない場所も出てきたことはあるけど、どれも必ず“場所”だった。
こんな空間のような所に来たのは、夢でも現実でも初めてだ。
ここに突っ立っていたってしょうがない。
そう思い、取りあえず前へ前へと歩き出した。
前へ歩く。と言ったって、こんな何もない所じゃ自分が本当に前へ進めているのかさえ分からない。
どれくらい歩いただろう。
いったい、どこまでこの空間は続いているのだろう。
どこまでも続く何もない世界。
俺はただただ歩き続けた。
すると、右の方から小さなピンクの何かがヒラヒラと飛んで来た。
「桜・・・の花びら?」
右を見てみると、大きな桜の木とその横にベンチがあった。
ベンチにはだれかが座っている。
髪の長い・・・女性。
でも、さっきまでこんなの無かった・・・と思う。
いつの間に・・・?
それは本当に気付けばあった。という感じだった。
今の季節は冬。
しかしその桜の木は満開で、桜の花びらがたくさん舞っていた。