私魔王として働きます。(2)
「それぞれの領地の状況を再度教えてもらえるか。」
「そうですね…
私のところは大きな変化はありません。
皆自分の仕事をしっかりとこなしつつ、鍛錬も怠っている様子はないです。
…しかし、前にも申し上げた通りこの地では食物が育ちにくい。
その為か貧富の差が少しずつですが明るみになっている気がいたします。
金があるものは食料を調達できますが、それ以外のものは買うこともできず、作ることもできず…
私としても、対策を考えてはいるのですが、なかなかうまくいきませんね…」
ヴィアベルはそう言って眉間にさらに深い皺を寄せる。
そう、ここ魔界の土は少し特殊だ。
人間の住む土地に比べ、土自体に含まれる栄養も少ない。
青々と茂る木々や、草花が生い茂っている様子はもちろんなく、城の周りも、それぞれの領地も石ころだらけのやせた土地が広がっている。
代々の王はそれでもこの荒れ果てた地で育つ強靭な食物を発見し、それらを育て人々の生活の糧にしてきた。
…だが、近年魔族の増加に合わせ、食物の収穫量が間に合わず徐々に魔族全体へと行き渡らなくなってきているのだ。
…前世の記憶を取り戻す前から抱えている問題ではあったが、この問題は早々に解決していかなければ…
「…そうだな。
貧富の差に関してもだが、食物の収穫量が減少してきているのもまた事実。
食が潤えば、国も豊かになる。第1の課題はやはり食の確保…ということになるな。」
さて、どうしたものか。
考えを巡らせる私に
「やっぱり人間界に出陣して、人間を滅ぼしちまいましょう!
そんで、人間の住んでる豊かな土地で新しいものを耕すんです。
そうすりゃあ、忌々しい人間を滅ぼすこともできますし、俺たち魔族の枯渇問題も解消されるじゃあないですか!」
ヒューゲルは意気揚々と言い放った。その瞳はキラキラと輝いている。
「…人間界への侵攻は認められん。
それは人と魔族の全面戦争になると言うことだ。
ヒューゲル。貴様も知っているだろう。
人との戦で、我ら魔族がどのような代償を払って来たかを…」
そもそも、私は人と争うつもりなんてないからね。
「…確かに先の戦いで先代の王、エルガー様が致命傷を負い1人では歩けぬ体となりました。王を辞退された際も『1人で動けず、前線にも立てぬ。民に護って貰うだけの王など本当の王ではない。』と仰り辞退されたと聞きます。」
アガルスの言う通り、先代の王エルガーは自身の動かぬ体に憤りを感じていた。
その身体が思い通りに動けば、彼は今もなおこの魔界を統治する絶対の王であっただろう。