盲目の少女 一
ごめんなさい。投稿できてなかったみたいです。
私はアマンダ。
生まれつき目が見えない病気にかかっていて、両親の顔もわからない。
でも私はこの状態でよかったと思っている。
世の中は顔だけで判断されることもあるのだとか。
私のお父さんやお母さんが悪人面をしていて、それで非難されるような状況で顔まではっきりわかっていたら庇うことができないかもしれないから。
いたずらされることもよくある。
目が見えないから誰が犯人かわからないだろうと決めてかかって、よくいたずらされるのだ。
しかし、昔から目が見えない私にそんなのは無意味だ。
目が見えないから耳がいい。目が見えないから鼻がいい。目が見えないから空気の流れがよくわかる。
様々なことから犯人は特定できる。
例えばいたずらをするときの掛け声や勢いをつけるための声などから、男か女か。
匂いで誰か、集団か。
無言で来られたリ、香水をつけて来ても、逃げるときの癖で誰がやったのかわかるようになってきた。
目が見えないことに少々の不満はあってもそれを嘆いたことはない。
そんないつも通りにいたずらを仕掛けてきた奴をあしらって帰ったある日の夜、事件は起こった。
「アマンダ、今日はどんなことがあったんだ?」
「今日もいたずらばっかりされたよ。いい加減無駄だとわかって欲しいもんだよ。」
私は呆れ気味に言う。
「まあまあ、いいじゃないの。みんなもアマンダのことが好きなのよ。」
そういってお母さんは呑気に言う。
そして―――
「みんな!逃げろ!魔物が攻めてきたぞ!」
「なんで魔物がこんな何もない町に!」
外から叫び声と共にそんな声が聞こえた。
「お父さん!外に魔物が!」
「わかっている!お前は母さんと一緒に逃げるんだ!山に行けば助かる!」
この町では山には神様が住んでいるとされ、山に行けば神様が助けてくれる、そう言い伝えられていた。
「いくわよ、アマンダ!」
「お父さんは?」
「俺はここでお前たちが逃げる時間を稼ぐ!」
「まってよ!だったら私も残る!」
「ダメだ!お前は母さんと一緒に逃げろ!」
「ダメじゃない――」
そこまで言ってお母さんに無理やり抱かれ連れていかれた。
「お母さん!なんで!」
「父さんはアマンダに死んで欲しくないのよ。誰だって自分の子供が一番かわいいのよ!」
「でも!」
「でもじゃない!それに男の人は家族を守るのも仕事なのよ!たとえ自分の命を懸けてでもね!」
そう言ったお母さんの声は震えていた。そっか、お母さんもお父さんが居なくなるのが寂しいんだ。
「わかった。でも町が安全になったら絶対戻ってこようね。」
「ええ、それまでもって欲しいけど・・・」
そして私とお母さんは逃げた。それなのに、町の門付近まで来たのに。
―グギャァァァアアア!!
後ろから魔物の咆哮が聞こえた。
あぁ、ここで私は死んでしまうのか。
「アマンダ、あなたは逃げて!そこに川があるでしょう!それを辿るのよ!」
お母さんは何を言っているのか。
「そんな!じゃあお母さんはどうするの!?」
「私は大丈夫、絶対に追いかける。」
「本当?絶対?」
「ええ、本当に絶対。」
「嘘ついてない?」
「ええ、嘘じゃないわ。」
「絶対に追いかけてきてよね。」
「ええ、―――」
最後のほうはよく聞き取れなかったが、きっと約束なのだろう。
私は川を辿って逃げ続けた。
そして魔物の声も聞こえなくなってしばらくして。
私は倒れてしまった。起きてお母さんを待つのに。倒れてしまった。
―――――
「ぅう、ここは――」
「お、目が覚めたか。ここは、ワシの拠点だよ。」
「ワシ?おじいさんなの?」
ワシ。それは町のおじいさんがよく自分を指す言葉として使っていた。なのでおじいさんかと思った。
「何を言っている。ワシはまだ18だよ。」
「えっ、18?」
18歳?何を言っているんだこのおじいさんは?
「でもワシって」
「すまんな、ワシは昔からワシのことをワシと呼んでいる。」
どうやら頭がおかしいとかではないらしい。そしていたずらや悪意を感じるような人ではない。
ん?私はいつから悪意が感じられるようになったんだろう?まあいっか。
「そ、そうなんだ...」
「ところで少女よ、お前はなんであんなところで倒れていたんだ?」
「倒れて...?あっ、お父さん!お母さん!」
そうだ。お父さんとお母さんが逃がしてくれたんだった。
「じゃあ見に行ってみる?」
この人、アルゴーさんは助けてくれたのにさらに助けようとしてくれる。こんな人は今までいなかった。
でもこれ以上迷惑はかけれない。
「い、いえ、助けてもらったのにこれ以上迷惑をおかけする訳には」
「いいよ、今日の狩りは終えてあとは家の点検をするだけだったからね、それは後でやればいいさ」
そういってアルゴーさんは、私を抱えて立ってしまった。
そして町に着いて一言。
「これは...」
「い、いったいどうなっているのですか!」
どうなっているのか。アルゴーさんは話してくれない。
「どうすればここまでひどいことができるのか...」
すると奥のほうから町のおじさんが声をかけてきた。
「アマンダ!どうして帰ってきたんだ!逃げろといっただろ!」
「おじさん!お父さんとお母さんは!」
「すまん...ロイとロゼは...」
「そんな...」
まさかお父さんとお母さんが死んでしまったなんて。
私はもう限界で泣いてしまった。
「あの、何があったんですか?」
アルゴーさんが気になったみたいで質問した。
おじさんはみんなの遺体を埋葬してくれていたみたいだ。
「その時の魔物は?」
「朝にはもういなかったよ。何もなくなった町に用はなくなったんだろうさ...」
魔物。それが今回の事件を引き起こして、さらにお父さんとお母さんを殺した。許せない。
「アマンダ、父さんと母さんの仇を討ちたいと思うかい?」
「あんた何言ってるんだ!アマンダにそんなことをさせるんじゃない!」
おじさんはこう言っているが、討つことができるなら討ちたい。
「アルゴーさん...あなたならできるの?私に仇を討たせてくれるの?」
「アマンダ!」
「わからない。ただ無性にイライラして、魔物をぶっ飛ばしたいと思った。だからついでにアマンダも仇を討つかい?」
どうやらアルゴーさんも魔物に怒りを感じているようだ。
後ろでおじさんがなにか言っているがもう頭に入ってこない。
「アルゴーさんがやるなら私もついていく。ここに居てもお父さんとお母さんは帰ってこない。だったら何かしているほうが私は気がしっかり持てる。」
そう、魔物に復讐する。決めた。私は強くなる。強くなって魔物を殺す。
声は覚えている。あの時の空気の流れも覚えている。
私は改めてアルゴーさんに挨拶をした。
「改めてよろしくお願いします、アルゴーさん。私はアマンダ、目が見えないけど、足手まといにはならないようにします。」
「ワシはアルゴー。山で10年ぐらい過ごしている。もしかしたらそれ以上かもしれないけどな。野生で生きていく術ぐらいはある。とりあえず、家に帰って準備をしていいか?それにおなかも空いているだろう。」
「はい!これからよろしくお願いします!」
どうやらアルゴーさんはあの山で暮らしているそうだ。それにしても10年。どれだけ修行すれば10年も山で生きていられるのだろうか。
「これはヘリスの肉だ。きちんと処理すれば柔らくて美味しいんだ。」
「へぇ、アルゴーさんはほんとに山で過ごしていたんですね。」
アルゴーさんが狩ってきたというヘリスの肉。とても美味しかった。
そこからはどうでもいい話をして寝た。アルゴーさんは何かすることがあるらしい。
そして私たちは旅に出た。
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